歯が急に痛み出すと、夜に眠れなくなったり休日に不安になったりしますよね。
すぐに歯科医院に行けないときは、少しでも和らげる方法を知っておくと安心です。
そんなときに役立つのが、ツボを押したり冷却を取り入れる応急処置です。
本記事では、歯痛に効くとされるツボの位置と押し方、安全に取り入れるための注意点をまとめました。あわせて、寝方や口腔ケアの工夫、市販薬の扱い方についても触れていきます。
歯の痛みに悩まされた時に、落ち着いて対応できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ツボ押しの基本と安全ガイド

ツボの押し方の基本は、短時間・弱め・清潔・良い姿勢が軸です。痛みが増す、腫れや熱が出る時は中止し、受診へ進みましょう。
道具と手どっちがいい?
道具は使わず、原則手で押すのがいいでしょう。手は、圧の微調整がしやすく、衛生管理がしやすいです。
さらに、夜間の寝室でも準備がいらず、再現が安定します。指の腹を使い、骨のきわへ斜めに寄せる押し方が安全です。
一方で、道具を使うなら先端が丸い物だけにし、アルコールで拭いてから短時間で終了しましょう。
ペン先や金属の角、マッサージボールの強圧は避け、迷ったら「手で弱めに短く」を合言葉にしましょう。
中止サイン(悪化/腫れ/発熱/しびれ)
痛みの悪化や感染の兆しが出たら即中断し、受診へ切り替えましょう。詳細は以下のチェックで判断します。
- 押すたびに痛みが強くなる
- 頬の腫れや熱感が出る
- 37.5℃以上の発熱が続く
- しびれ・麻痺感が出る
- 口が開きにくい
- 飲み込みづらい
- 脈打つ痛みが増える
上記に当てはまるものがあれば、ツボ刺激をやめて冷却へ切り替え、受診を急いでください。あくまで、応急処置ということを頭に入れといてください。
また、発熱・顔の腫れ・開口障害・飲み込みづらいが同時に見られる場合は、地域の救急相談窓口を使い、速やかに診療体制へ進みましょう。
歯痛に効くツボ7選

歯痛に効くツボは、短時間、弱め、清潔が前提です。10秒押し、5秒休む動作を3セット行い、左右をそろえて進めます。
各ツボは痛気持ちいい範囲で短く押して、痛みが増したり、腫れや熱が出たりするときは中止し、受診へ進みましょう。あくまで受診が一番ということを頭に入れて、読んでください。
合谷(手)
まず最初に押してほしいのが合谷です。親指と人さし指の骨が交わる手の甲のくぼみに指腹を当て、やや人さし指側へ斜めに押します。
爪は立てず、皮膚をこするような刺激は避けてください。
短時間に区切ることで、過刺激を防ぎながら痛みを落ち着けやすくなります。
歯痛点(手背の小窩)
中指と薬指の骨の間にある小さなくぼみが歯痛点です。点を意識して弱めに垂直へ押すのがコツです。
合谷より強い刺激は避け、皮膚が赤くなるほど押し込まないようにしましょう。また、細いペン先や金属で刺激するのも控えてください。
下関(頬骨弓下のくぼみ)
口を開閉すると動く頬骨の下縁に下関というツボがあります。人さし指の腹を上向きに差し込み、軽く押すのが基本です。
歯ぐき側から強く押すのはNGです。皮膚側から静かに圧をかけ、跳ねるような痛みがあればすぐにやめてください。
加えて、冷却と併用すると効果が出やすいです。
頬車(下顎角の前上方)
頬車というツボは、噛みしめると筋が盛り上がる場所にあります。親指で内上方へ持ち上げるように押します。夜に腫れや熱感が強い場合は無理せず、冷却へ切り替えてください。
強く揉むのではなく、点で押して離すことを意識しましょう。
承漿(下唇中央の下)
唇の中央のすぐ下に小さなくぼみがあり、ここが承漿です。人差し指で下から奥へ軽く押します。口内炎や傷があるときは触らないでください。
唇が乾燥していると刺激が強く出るため、前後で水をひと口含むと和らぎます。
短時間で済ませ、押しすぎないように注意しましょう。
内庭(足:第2・第3趾間の付け根)
足のツボを使うなら内庭です。第2・第3趾の付け根の間を、親指で足背に向かって垂直に押します。就寝前は足を洗って清潔を保つようにしてください。
強く押すと翌朝にだるさが残りやすいので、短時間で区切りましょう。手のツボと交互に使うと刺激が偏りにくくなります。
商陽(人さし指の爪角)
人さし指の爪の親指側の角にあるのが商陽です。生え際を横からはさむようにして短時間だけ刺激します。商陽は、他のツボとは違い、5〜7秒を左右3回が目安です。爪で皮膚を傷つけないように指腹で支えてください。
刺激が鋭く感じたらすぐにやめましょう。強い連続押しは避け、合谷や下関とローテーションで行うのが安心です。
参考文献:鍼灸点刺激療法(主に鍼・灸)を歯科診療所で多様に応用|日本鍼灸学会誌
ツボ押しと同時にやる応急処置と注意点

ツボ押しは、あくまで民間療法で応急処置です。ツボ押しだけに頼らず冷却、寝方、口腔ケアを合わせて進めます。刺激は弱く短くし、温めや飲酒は避けます。悪化の合図が出たら中止し、受診へ進みましょう。
冷却する
冷却は痛みの波を下げる基本です。頬の皮膚側にタオルを一枚はさみ、保冷材を5〜10分当て、休憩5分のサイクルでやっていきます。氷を直に当てると刺激が強まるため、避けましょう。
冷水タオルや冷えたペットボトルも代用できますが、しみる痛みが強まる恐れがあるため、口の内側から冷やす方法は避けます。静かに外側から冷やし、深呼吸を合わせましょう。
寝方・枕を変える
仰向けで低い枕は痛みが増しがちなので、横向きで患側を上にし、枕はやや高めに設定しましょう。
頭を少し上げると拍動の増幅が抑えられます。
ただし、横向きがつらい人は、抱き枕や丸めたタオルで体の前を支えます。舌先を上あごの前歯うらに軽く触れさせ、上下の歯を離して眠りましょう。
口腔ケアをする
口腔ケアは優しく短くを軸に、軟らかい毛の歯ブラシで、痛くない側から始めましょう。
食片が残ると神経が刺激されやすくなります。
また、うがいはぬるま湯で小刻みに1〜2回までにして、アルコール強めの洗口液や勢いの強い水流は避けます。
加えて、歯間ブラシは無理に入れず、就寝前は甘い飲食を避け、口の中をさっぱり整えましょう。
避けること
血流を強めたり神経を刺激する行為は、痛みや腫れを悪化させる原因になります。特に体を温める習慣や強い刺激は逆効果になるため注意が必要です。
以下に避けたい行動をまとめます。
<避けるリスト>
- 熱い風呂・サウナ
- 飲酒・寝酒
- 辛い物・硬い物
- 強いうがい・強い水流
- 長時間の強圧・揉み動作
- 舌や指での反復タッチ
迷ったら「刺激は減らす、静かに冷やす」を合言葉にしてください。
市販薬を飲む際の注意点
市販薬は用法用量を厳守しましょう。加えて、総合感冒薬や頭痛薬との重複成分に注意してください。
短時間での追加服用は控えて、発熱・顔の腫れ・口が開きにくい・飲み込みづらいが出た場合は、薬で様子見をやめて受診へ切り替えましょう。
妊娠中や持病がある人は、自己判断で新しい薬を足さないように注意してください。
関連記事:歯が浮いた感じで噛むと痛い…市販薬で治る?それとも歯医者?
放置のリスクと進行段階

放置は痛みの悪化だけでなく、炎症の拡大につながります。応急処置で軽くなっても治癒ではありません。経過を見ず、早めに受診へ進みましょう。
合併症と生活の質|放置するとどうなる?
合併症と生活の質は密接に関係しています。
痛みを放置すると、炎症の範囲が広がり、処置が難しくなると同時に、痛み、腫れ、薬の影響が日中にも及びます。そのため、治療が長期化しやすく、睡眠と食事と仕事へ連鎖的に影響しやすいです。
見逃せないサインは以下です。
- 顔の腫れや熱感
- 口が開きにくい
- 飲み込みづらい
- 37.5℃以上の発熱
上記のことを無視すると、仕事や育児などのパフォーマンスが落ち、再発不安も残るでしょう。合併症を避けるには早期受診と刺激を回避することが大事になります。
進行段階
痛みを放置すると、歯髄(しずい)、歯根の先、顎周囲の順で広がっていきます。
夜に拍動痛が出る段階は、歯髄内の圧が高まって神経が強く反応している進行サインです。このまま悪化すると腫れや膿、さらには、発熱へとつながる恐れがあります。
夜間の強い痛みが続く段階で待たずに受診しましょう。
関連記事:歯茎が腫れて押すと痛いのは危険?放置NGサインと正しい対処法
受診の目安と夜間・休日歯科の探し方

応急処置で痛みが和らいでも治ったわけではありません。強い痛みや腫れがある場合は受診が必要です。以下では、受診の目安、夜間や休日に歯科を探す方法を解説します。
受診するタイミングの判断
受診するタイミングは、症状の進み方と全身への影響を見極めることが基準です。
以下のような症状があれば受診しましょう。
- 発熱や顔の腫れがある
- 口が開きにくい、飲み込みづらい
- 拍動痛の増加がある
- 膿の味がする
- 外傷がある
- 妊娠中や持病で不安が強い
冷却やツボ押しで一時的に和らいでも、夜間の強い痛みが続く時点で進行している可能性が高いです。
朝まで我慢するのは負担が大きいので、緊急レベルと迷う場合は地域の救急相談窓口へ電話し、指示に従いましょう。
夜間・休日歯科の見つけ方
緊急時の歯科の見つけ方は、公的な情報源を活用することが最短ルートです。
診療体制や対応時間が地域ごとに異なるため、自治体や医師会の窓口を頼るのが安全でしょう。
探す方法は以下が有効です。
- 自治体の公式サイトで「夜間歯科」「休日歯科」を検索
- 救急安心センター「#7119」に電話相談
- 日本歯科医師会の地域歯科情報ページを確認
- 翌朝に備えてオンライン予約が可能な歯科を確保
東京都や大阪市では夜間急患歯科センターが設置されています。地方でも市区町村ごとに休日診療所を案内するページが用意されています。
痛みが強い夜や休日は、自治体サイトと#7119を使い、確実に診療先を見つけましょう。
再発させないための予防法

応急処置で落ち着いても、根本の原因は残ります。そのため、昼の噛みしめ対策と夜の睡眠環境づくり、そして定期検診が大事になります。小さな習慣から整えましょう。
噛みしめ癖や睡眠環境の改善
歯や顎にかかる圧が長引くほど歯髄や歯周へ負担が積み重なります。
最近では、TCHと呼ばれてる口を閉じている時に、上下の歯が常に触れている状態が口腔トラブルの原因になると、日本歯科医師会で注目を浴びています。
以下の具体策を確認して、日々の生活を過ごしていきましょう。
<実践チェック>
- 日中は上下の歯を離す
- ガムは噛みすぎない
- PC作業は画面の高さに姿勢や目線を合わせる
- 枕はやや高めにする
- 横向きで患側にする
- 就寝前のアルコールを控える
- 寝る前のスマホを短時間にする
上記のチェックを確認し、日常生活で意識していきましょう。
参考文献:お悩み相談!教えて先生 TCH(歯列接触癖)とは?|公益社団法人 日本歯科医師会
定期検診での早期発見
定期検診が再発防止の最短ルートです。
実際に、厚生労働省のページでも、早めに歯科治療を受ける習慣を維持することが歯の喪失を抑制することが明らかにされています。
定期的に歯科医院に通うことで、歯が痛くて寝られないということの確率は少なくなるでしょう。軽い症状のうちに対処し、通院と家庭ケアを怠らずやることが大事です。
参考文献:厚生労働省「歯の健康」
関連記事:【食いしばりで歯が痛い】原因・治し方・対処法を徹底解説
まとめ|ツボ刺激は緊急時に|早期受診が大切
最後にもう一度、歯痛への応急対処法と受診の目安をまとめておきます。
- ツボ押しは、短時間、弱め、清潔、良い姿勢が基本で、痛みや腫れ、発熱が出たら中止する
- 冷却や寝方の工夫、口腔ケアを合わせて行い、血流を強める行為は避ける
- 強い痛み、腫れ、発熱があれば市販薬で粘らず、早めに歯科を受診する
- 夜間や休日は自治体サイトや#7119で診療先を探すのが安全
- 再発防止には、噛みしめ癖や睡眠環境の改善、定期検診での早期発見が欠かせない
応急処置で楽になっても根本的な治療にはなりません。迷ったら自己判断せず、できるだけ早く歯科を受診しましょう。
今回ご紹介した方法を日常に取り入れることで、痛みを和らげながら悪化や再発を防ぐことができるでしょう。安心して過ごすためにも、小さな工夫と早めの受診を心がけてください。
デンタルオフィス虎ノ門は駅近で便利!
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当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校