「虫歯はないと言われたのに、奥歯がズキズキする…」「ストレスで歯まで痛くなることってあるの?」そんな悩みを抱える方に向けた記事です。
この記事でわかること
- 虫歯ではないのに奥歯が痛む主な原因
- ストレスが奥歯の痛みに関係する理由
- 痛みをやわらげるための具体的な対処法
奥歯の痛みは必ずしも虫歯が原因とは限りません。歯茎や噛み合わせ、さらにはストレスや全身の不調が影響していることもあります。痛みの原因を正しく理解すれば、不要な治療を避け、早く改善へ向かえます。
この記事を読むことで、自分の症状がどのタイプに当てはまるのかが分かり、歯科に行くべきタイミングや日常でできるケア方法が明確になります。歯が痛くて悩んでる人は、最後まで読んでみてください。
目次
虫歯ではないのに奥歯が痛いのはなぜ?

虫歯ではない奥歯の痛みは、歯茎の炎症や噛み合わせの異常、神経や筋肉のトラブルなど多くの要因で起こります。原因を特定するには歯科や医科での診察が必要です。
痛みが出る仕組みと歯の構造
痛みが出る仕組みは、歯の中にある神経が刺激を受けることで始まります。奥歯の内部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる部分があり、神経と血管が集まっています。歯髄は象牙質(ぞうげしつ)とエナメル質という硬い組織で守られていますが、炎症や圧迫が加わると痛みを感じやすいです。
- エナメル質:人体で最も硬い組織で、噛む力や外的刺激から内部を守る
- 象牙質:エナメル質の内側にあり、細い管状の構造を通じて刺激を歯髄に伝える
- 歯髄:神経と血管が集まる部分で、冷熱や圧力の情報を脳に送る
歯茎が下がって象牙質が露出すると、冷たい水を飲んだだけでも神経に直接刺激が届き、鋭い痛みを感じます。虫歯や強い噛みしめ、歯ぎしりも同じように歯髄や歯根膜(しこんまく)を圧迫し、痛みを起こす原因になります。こうした構造と仕組みを理解すると、痛みの原因や予防の方法が見えてくるでしょう。
「虫歯ではない歯痛(非歯原性歯痛)」とは何か
虫歯ではない歯痛(非歯原性歯痛:ひしげんせいしつう)とは、歯そのものに原因がないのに痛みが出る状態です。歯の神経や歯茎以外の部位が関係し、脳が歯の痛みとして認識してしまいます。歯科治療をしても改善しない場合、この可能性があります。
虫歯の痛みと、虫歯ではない痛みの比較
項目 | 虫歯の痛み | 虫歯ではない歯の痛み |
原因 | 虫歯に潜んでいる菌が歯を溶かし神経まで達する | 筋肉、神経、鼻、副鼻腔(ふくびくう) |
痛みの出方 | 甘い物や冷たいものでしみる、噛むと痛い | 特定の時間帯や体制で悪化する |
見た目の異常 | 歯に穴や変色がある | 歯は正常に見える |
治療 | 虫歯の除去と詰め物・被せ物 | 原因に応じた医科・歯科での治療 |
検査 | レントゲンで虫歯が確認できる | レントゲンで異常なしの場合も多い |
虫歯ではない歯痛は、歯の治療だけでは改善しないため、原因の特定が欠かせません。
歯に原因があるケース(虫歯以外)

奥歯の痛みは必ずしも虫歯だけが原因ではありません。歯茎や歯根の炎症、神経の異常、噛み合わせの問題など、複数の要因が関わる場合があります。
歯周病・歯周炎が進行している
歯周病や歯周炎(ししゅうえん)は、歯を支える歯茎や骨に炎症が起こる病気です。初期は軽い腫れや出血だけですが、進行すると奥歯の痛みや動揺の原因になります。炎症が強まると、噛むたびに歯が揺さぶられ、神経が刺激されやすくなります。
歯周病・歯周炎の特徴
- 歯茎の腫れ
- 歯磨き時の出血
- 噛むときの痛み
- 歯と歯茎の間に膿が出る
- 口臭の悪化
早期に治療を始めれば進行を食い止められます。放置すると歯を失う原因にもなるため、違和感があれば歯科を受診しましょう。
関連記事:歯周病治療
歯肉炎を起こしている
歯肉炎(しにくえん)は歯茎に限定された炎症で、比較的初期の段階です。歯茎が赤く腫れ、ブラッシングで出血しやすくなるのは、歯垢の蓄積が主な原因です。特に炎症が起きやすいのは、磨き残しが多い奥歯です。
痛みが軽度でも、炎症を放置すると歯周炎に進行します。歯肉炎の改善には正しい歯磨きと、歯科でのクリーニングが有効になります。自宅ケアと専門ケアを組み合わせ、早めの回復を目指しましょう。
歯髄に膿が溜まっている(歯髄炎)
歯髄炎(しずいえん)は歯の中心部にある歯髄が炎症を起こし、膿が溜まった状態です。虫歯だけでなく、歯のヒビや外傷、深い歯周病から感染が広がる場合もあります。膿が溜まると内部の圧力が高まり、強い痛みや拍動感が出やすくなります。
炎症を鎮める方法は、根管治療で膿を排出するのが一般的です。放置すると全身へ感染が広がる危険があるため、早期の対応が必要になります。
知覚過敏になっている(象牙質知覚過敏)
知覚過敏(象牙質知覚過敏)は、象牙質が露出して神経へ刺激が伝わりやすくなった状態です。典型的な症状として、冷たい水や熱い飲み物で歯がキーンとしみるのがあります。
知覚過敏を悪化させやすい食べ物や飲み物
- 冷たい飲み物や氷
- 熱いスープやコーヒー
- 酸味の強い柑橘類や酢
- 甘いお菓子やジュース
- 炭酸飲料
これらは象牙質の表面や歯の神経に直接刺激を与え、症状を強めます。例えば、冷たい飲み物と熱い飲み物を交互に摂取すると、温度差が大きく神経への負担が増すでしょう。刺激を避けながら歯科での適切なケアを受ければ、症状の軽減につながります。
親知らずが関係してる
親知らずは、生える向きや位置によって奥歯に痛みを起こすことがあります。特に横向きや半埋没の場合、周囲の歯肉に炎症(智歯周囲炎:ちししゅういえん)を引き起こし、強い痛みや腫れの原因になりやすいです。
親知らずの生え方の種類
- まっすぐ生えている:歯ブラシが届きにくく虫歯や歯周病の原因になることがある
- 横向きに生えている(水平埋伏:すいへいまいふく):隣の歯を圧迫し、痛みを起こしやすい
- 斜めに生えている(傾斜埋伏:けいしゃまいふく):一部だけ出ていて、炎症や物が詰まりやすい
- 半埋没している:歯茎に覆われた部分で細菌が繁殖しやすく、炎症を起こしやすい
- 完全埋没している:歯茎や骨の中に完全に埋まっており、症状がなくても圧迫や炎症の原因になることが多い
炎症が繰り返される場合や、隣の歯を圧迫している場合は抜歯を検討しましょう。症状が軽くても、親知らずの位置を確認するために歯科でレントゲン検査を受けておくことをおすすめします。
関連記事:親知らずが生えかけで痛いのはなぜ?原因と対処法を歯科医が徹底解説!
歯根膜が炎症している(歯根膜炎)
歯根膜炎(しこんまくえん)は、歯と骨をつなぐ組織である歯根膜に炎症が起きる状態です。強く噛みしめたりすることや外傷などが原因になります。炎症部分が腫れると噛んだときの痛みが強くなり、違和感が続くでしょう。
軽度であれば噛み合わせを調整し、安静にすることで改善しますが、感染が関わる場合は根管治療が必要になることもあります。
噛み締め、歯ぎしりに問題がある
噛み締めや歯ぎしりは、歯や周囲組織に大きな負担をかけます。特に睡眠中は、意識せずに強く噛みしめてしまうため、歯根膜や顎関節、歯の神経に影響を及ぼしやすいです。
噛み締め・歯ぎしりの特徴
- 朝起きた時の顎や奥歯の疲労感
- 歯のすり減りや欠け
- 知覚過敏の悪化
- 顎関節の違和感や痛み
改善にはマウスピースの装着や、ストレス緩和、日中の噛み締める癖を意識的に減らすことが大事です。症状が続く場合は歯科で相談しましょう。
歯以外が原因で奥歯が痛むケース

歯そのものに奥歯の痛みが関係しているケースだけではありません。神経や筋肉の異常、全身の病気、精神的なストレスなど、口腔外の要因で痛みが出ることがあるでしょう。
神経・筋肉系が関係している場合
神経や筋肉の不調によっても奥歯に痛みが出ることがあります。特に顎や顔の筋肉、神経のトラブルは、歯の痛みと同じような感覚を引き起こします。そのままにしておくと、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあるため注意が必要です。
代表的な症状例
- 三叉神経痛:顔の片側に電気が走るような激しい痛み
- 顎関節症:口の開閉で顎や耳周辺に痛みや音が出る
- 咬筋の緊張:長時間の食いしばりで筋肉が硬くなる
- 首や肩のこり:神経圧迫で奥歯に鈍い痛みを感じる
神経や筋肉が原因の場合、歯科だけでなく整形外科や神経内科での診察が必要になることもあります。原因を早く突き止め、適切な治療を受けることが改善への近道です。
全身疾患に問題がある可能性
奥歯の痛みを全身の病気が引き起こすケースもあります。口の中とは直接関係がなくても、痛みとして現れることがあるでしょう。
実際に私が経験したことのある、副鼻腔炎では上顎奥歯の根元に近い副鼻腔が炎症を起こし、噛んだ時に響くような痛みが出ます。また、糖尿病による神経障害では、慢性的な歯の違和感が出る可能性もあります。
歯科治療だけでは、全身疾患が原因の歯痛は改善しません。体調変化や他の症状と併せて、内科での検査も受けることが大切になります。
ストレスが関係している場合

精神的なストレスも奥歯の痛みに大きく関わります。長期間の緊張状態は、無意識の食いしばりや歯ぎしりを招き、歯や顎に負担をかけます。
日中の仕事中や睡眠中に奥歯を強く噛みしめると、歯根や歯周組織に炎症が起き、じんわりとした痛みや違和感が続くこともあるでしょう。また、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、痛みを感じやすくなる傾向もあります。
対策例
- マウスピースの使用
- リラクゼーション法(深呼吸、ストレッチ、瞑想など)
- 睡眠・生活リズムの改善
生活習慣の改善と並行して、心身の負担を減らす対策を進めましょう。
奥歯が痛いときの応急処置(歯がジンジンする場合)

奥歯の痛みが強い場合は、すぐに歯科を受診するのが最も確実です。しかし受診まで時間があるときは、痛みを和らげるための応急処置を取りましょう。
患部を冷やす
奥歯のジンジンする痛みは、冷やすことで一時的に和らぎます。冷却によって血流が抑えられ、炎症や腫れの進行を緩められるからです。氷を直接歯に当てるのは刺激が強すぎるため、氷や保冷剤をタオルで包み、頬の外側から数分間当てましょう。
長時間の冷却は血行を悪くしすぎるため、10分冷やしたら5分休むなどの間隔をあけるのがおすすめです。入浴や飲酒など血流を促す行動は控えましょう。適切に冷やせば、受診までの痛みを軽減できるはずです。
市販の痛み止めを服用する
奥歯の痛みが強いときは、市販薬で一時的に抑える方法があります。服用前には必ず用法・用量を確認してください。
痛み止めはいくつか種類がありますが、薬局でよく見かけるのは以下の3つです。
- ロキソプロフェン(例:ロキソニンS)
- アセトアミノフェン(例:カロナール)
- イブプロフェン(例:イブA錠)
空腹時の服用は胃を荒らすおそれがあるため、軽く食事をしてから飲むのが安心です。持病や服用中の薬がある場合は、薬剤師や医師に相談しましょう。あくまで応急処置であり、原因を治さない限り再び痛みは出てきます。
口腔内を清潔に保つ(歯磨き・フロス)
歯の痛みがあると、歯磨きをためらう方も多いですが、口腔内の清潔は痛みの悪化を防ぐために必要です。汚れや細菌が残ると炎症が強くなり、症状が進みやすくなります。
柔らかめの歯ブラシでやさしく磨き、痛む部分は強く当てないよう注意しましょう。歯と歯の間の汚れはデンタルフロスで取り除きます。うがいはぬるま湯や低刺激の洗口液を使うと刺激を減らせます。清潔な状態を保てば、受診までの間も症状の悪化を防げるでしょう。
まとめ(奥歯の痛みの原因と正しい対処法を理解しましょう)
この記事のポイント
- 奥歯の痛みは虫歯以外にも、神経・筋肉・全身疾患・ストレスなどが原因になる
- 神経や筋肉が関係する場合は、顎関節症や神経痛などを疑う
- 痛みを引き起こすことがある全身疾患が関係していることがある。
- ストレスは歯ぎしりや食いしばりを誘発し、奥歯の慢性的な痛みにつながる
- 応急処置としては、患部を冷やす・市販薬を服用する・口腔内を清潔に保つの3つが有効
まずは、応急処置で一時的に痛みを和らげましょう。ただし、痛みが数日以上続く、夜眠れないほど強い、腫れや発熱を伴うなどの場合は、早急に歯科を受診してください。原因を特定して治療しなければ、症状が悪化するおそれがあります。日常生活での小さな異変にも注意し、早めの対応を心がけていきましょう。
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この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校