「食べ物を食べていたら、歯が欠けた…」
突然のことでどうしたらよいかわからず、悩まれる方も少なくありません。
歯が欠けてしまったら、自然に修復はしません。虫歯は内部で横に広がり、薄いエナメルが割れやすくなります。早めに歯科医院へ相談することが、自分の歯を長く保つための近道です。
【この記事でわかること】
- 虫歯で歯が欠けるメカニズム
- 欠けやすい部位と生活要因
- 応急対処とNG行為
- 欠け方別の治療選択
歯が欠けてしまって不安な方や歯を健康に保ちたい方は、ぜひ読んでみてください。
目次
虫歯で歯が欠けるメカニズム

虫歯は表面より内側で広がり、支えを失った薄いエナメルに咬む力が集中して割れやすくなります。
ここでは、虫歯で歯が欠けるメカニズムを説明します。
C1〜C4の進行と症状の目安
虫歯は、最初は小さく見えても内部で広がる場合があります。
以下の表を参考に症状による進行を確認しましょう。
| 進行度 | 症状の目安 | 見た目のヒント | 受診・治療の目安 |
| C1 | 痛みはほぼなく、冷たい物もしみにくい | 白っぽい斑点や小さな着色がある | ・清掃とフッ素で経過観察 ・定期チェック |
| C2 | 冷たい物や甘い物がしみたり、食べ物が挟まりやすい | 小さな穴でも中で広がりやすい | ・早めの虫歯除去 ・レジン/インレー修復 |
| C3 | 何もしていなくてもズキズキ痛み、夜に強くなることがある | 穴が深い、欠けが広がることがある | ・根管治療+暫間修復 ・後日最終補綴 |
| C4 | 痛みが弱くても歯ぐきが腫れたり膿が出ることがある | 歯の頭がほぼ失われ、根だけ残る | ・保存困難なら抜歯 ・欠損補綴を検討 |
痛みが弱くても進行している場合があります。どうしようか迷うなら、早めに歯科医院を受診しましょう。
エナメル質の脱灰と象牙質の脆弱化
歯の一番外側にあるエナメル質は、甘い飲み物や酸っぱい食品で口の中が酸性に傾くとミネラルが抜けやすくなります。これを脱灰と言います。
時間がたつと唾液やフッ素で一部が戻る再石灰化が起こります。ただし、甘い物や酸味のある飲食の回数が多い日が続くと追いつきません。
虫歯がエナメル質の下のやわらかい象牙質まで広がると、象牙質はスポンジのように弱くなります。結果としてエナメル質の殻を支えにくくなり、普段の咬む力でも歯の縁や咬頭が欠けやすくなります。
内部からの崩壊と咬合圧による破折
虫歯で歯の内側に空洞が広がると、周囲の歯質が薄くなり、エナメル質の殻を支えにくくなります。
その状態で咬む力(咬合圧)がかかると、力が薄い壁や咬頭、縁に集中し、健全な歯なら耐えられる程度でも割れやすくなります。硬い物や食いしばりがある場面では一気に欠ける場合があります。
見た目が小さくても内部が弱いと突然欠ける恐れがあります。早めに歯科医院で診査を受け、負荷が集中しにくい修復設計を選びましょう。
関連記事:虫歯になりそうな歯の見分け方と受診の目安
虫歯で歯が欠けやすい部位と原因

虫歯で歯が欠けやすい場所は、形の弱点と虫歯の広がりやすさが重なる部位です。ここでは、部位別の理由を説明します。
咬合面の溝と咬頭
歯の溝で虫歯が広がると、山の先(咬頭)に力が集まり割れやすくなります。
さらに溝は食べかすが残りやすく、内側で歯が薄くなります。歯の輪を作る壁(辺縁隆線)が弱ると支えが減り、ひと噛みで欠ける場合があります。シーラントや早期修復が有効です。「溝の虫歯+力の集中」で欠けが起こります。
歯と歯の間や歯頸部
見えにくい場所は、内部から弱りやすく欠けに直結します。
歯と歯の間はフロス不足で虫歯が横に広がりやすく、表面だけ薄い膜のように残ります。ある日パリッと剥がれることがあります。歯頸部や根の表面は進みが速く、歯を下から支える力が落ちてしまう可能性があります。「見えない+支えの減少」には注意しましょう。
修復物の周囲と親知らず
歯の段差と磨きにくさが、再発う蝕と欠けの引き金になります。
詰め物や被せ物の縁は汚れが停滞しやすく、縁の内側で虫歯が進むと土台が脆くなるためです。外れた拍子に歯ごと欠ける可能性があります。親知らずは位置的に磨き残しが出やすく、手前の歯も巻き込む場合もあるでしょう。「段差+清掃困難」は継続管理が必要です。
食いしばりや間食頻度など生活要因
強い力と長い酸性時間が重なると、欠ける確率が上がります。
食いしばりや歯ぎしりは一時的に高い荷重を生み、薄い壁へ応力が集中します。間食や甘い飲料が多いと口の中が酸性寄りの時間が延び、内側が弱りやすくなります。口が乾く人は再石灰化が遅れがちです。「力」と「酸性時間」の管理が鍵です。
歯が欠けているか心配な方は、以下の受診の目安を確認してみてください。
- 冷たい物でしみる回数が増えた
- フロスが同じ場所で引っかかる
- 食べ物が挟まる
- 詰め物の縁でザラつきや段差を感じる
チェックが当てはまる場合は歯科医院へ相談しましょう。症状の強さと進行度は一致しない場合があります。迷ったら早めに評価を受けてください。
虫歯で歯が欠けたときの応急対処

歯が欠けてしまう状態は、歯科医院での受診が必要になります。ただし、受診まで日数が空くときは、悪化を抑える工夫が役立ちます。
ここでは清掃の仕方と刺激を減らす方法を説明します。
痛みや出血、しみるときのセルフケア
歯が欠けたときに痛みや出血、しみるなどの症状がある場合があります。その際に家庭でできる一次対応を紹介します。
夜間や仕事で受診がすぐ難しい場合も、以下の表を参考に対処してみてください。
| 状況 | まずすること | 家でのケア | 受診の目安 |
| しみるズキズキ痛い | 常温の水で軽くすすぐ | ・やわらかい歯ブラシで周囲のみ清掃 ・鎮痛薬は用法を守る ・冷熱や甘味を控える | ・数日内 ・夜間痛や増悪は早め |
| 出血 | 清潔なガーゼで5〜10分圧迫 | ・強いうがいを避ける ・熱い飲食や辛味を控える | ・当日〜翌日 ・止血しない場合は早急 |
| 欠けた破片がある | 洗って清潔な容器で保管 | ・自己接着はしない ・食片が詰まらないよう軽く清掃 | ・早め (破片を持参する) |
| 詰め物が外れた | 誤嚥しないよう保管 | ・市販の仮着材は使わない ・粘着性の高い食品を避ける | ・早め ・二次う蝕の確認が必要 |
| 腫れ発熱 | 頬をやさしく冷やす | ・温めない ・強いマッサージはしない | ・早急 ・感染拡大に注意 |
応急対応はあくまで一時しのぎです。痛みが軽くても歯科医院で評価を受け、欠けた範囲と虫歯の進み具合を確認しましょう。
NG行動とその理由
歯が欠けてしまったときにやりがちな行動を避けるだけで、悪化を抑えやすくなります。
以下の行動はしないようにしましょう。
- 欠けた部分を舌や指で触る:
粘膜を傷つけやすく、細菌が入りやすくなります。欠けが広がる原因にもなります。 - 瞬間接着剤や市販の仮着材で自己修理する:
化学刺激や誤嚥の恐れがあります。除去が難しく、正確な診査を妨げてしまう恐れがあります。 - 強いうがいや高濃度アルコールのうがいをする:
出血や痛みが長引きやすく、口の乾燥でしみが強まります。 - 鎮痛薬を歯ぐきへ直接当てる:
粘膜の化学熱傷(やけど)につながります。炎症が増す場合があります。 - 氷やナッツなど硬い食品やキャラメルなど粘着性食品を噛む:
薄い壁に力が集中し、破損範囲が広がります。外れた修復物の再装着も困難になります。 - 患部を温めたり強くマッサージしたりする:
血流が増え、腫れや痛みが強く出やすくなります。 - 受診の先延ばしをする:
内部の崩壊が進み、治療範囲や回数が増えやすくなります。歯科医院での早めの評価が安全です。
歯が欠けたことで不安になり、ついついしてしまいがちな行動ですが、安静にし、余計な負荷をかけないように過ごしましょう。できるだけ早めに歯科医院を受診してください。
関連記事:虫歯による歯茎の腫れの放置は危険?悪化サインと早めに受診すべき症状
虫歯で歯が欠けたときの治療法

虫歯の治療は「欠けの大きさ」「位置」「噛む力」「虫歯の進み具合」で選びます。ここでは、虫歯で歯が欠けたときの治療法を説明します。
小さな欠け:コンポジットレジン修復の適応範囲
小さな歯の欠けは、樹脂素材のレジンで早期に整える方針が中心です。
詰め物(レジン)を取り付ける面の多くがエナメル質の場合は接着が安定し、削る量を抑えやすいからです。色や形も周囲に合わせやすいです。
まずは乾燥させ、う蝕を取り除いたあと段差と着色を整えます。噛む面(咬頭)へ力が強くかかる位置なら、割れやすい形を避ける設計にします。
小さな欠損はレジンで早めに封鎖して清潔に保ちましょう。
中等度欠損:インレーやアンレーを選ぶ判断材料
歯の欠けが広がり、咬頭を一部覆う必要がある場合は、間接修復(インレーやアンレー)を検討します。
辺縁隆線が弱いと力が集中するため覆う範囲を適切に広げ、形で強度を補います。材料は清掃性や厚みの確保、噛む力の強さ、金属アレルギーの有無などを見て決めていきましょう。
「覆う範囲」と「材料特性」を合わせると、再破折の予防に役立ちます。
大きな欠損:クラウン修復と支台築造の要否
大きく欠けてしまい残る歯が少ない場合は、被せ物(クラウン)にし、必要に応じて土台作り(支台築造)を行います。歯の帯(フェルール)を確保し、力を面で受ける形にすると、日常の咬む力に耐えやすいためです。
根の治療が終わった歯は、土台で高さと厚みを作り、歯肉との境を清掃しやすい位置に整えます。噛む力が強い方は、厚みを十分に確保し、欠けやすい縁を避ける設計にする場合もあります。
大欠損は形で守る発想が基本です。設計と清掃性を両立させましょう。
歯髄の関与:歯髄保存か根管治療かを判断する視点
神経がどこまで影響を受けているかで「歯髄保存」か「根管治療」を選びます。
可逆的なら刺激を減らせば落ち着きますが、不可逆的に炎症や感染が進むと痛みや腫れが再燃しやすいためです。
目安は以下のとおりです。
- 歯髄保存寄り:
痛みが短時間でおさまる、冷水テストで一過性のしみがある、打診痛が弱い、X線で深い影はあるが根の先の黒い影は乏しいなどの場合には 間接覆髄やMTA覆髄※などを検討します。 - 根管治療寄り:
ズキズキする自発痛や夜間痛がある、温熱で長く痛む、打診痛が強い、X線で根尖部に透過像(黒い影)がある場合には、 神経を清掃と消毒し密封、その後に最終修復します。
除痛だけで止めず、最終補綴まで一気通貫で仕上げると再発のリスクを抑えやすいです。最終判断は診査所見と画像で決めていきましょう。
※間接覆髄(かんせつふくずい)とMTA覆髄(MTAふくずい)は、歯の神経(歯髄)を残すための歯髄保存療法のことです。
残根状態の場合:抜歯後の選択
歯の保存が難しい残根は、抜歯後の補う方法を比較し、清掃性と負担の少なさを優先します。残った根は再感染や腫れの原因になりやすく、早めの欠損補綴で噛む力と清掃性を回復しやすいためです。
主な選択肢は、以下のとおりです。
- ブリッジ:固定式で隣在歯の削合が必要
- 部分入れ歯:清掃しやすいが、装着感に慣れが必要
- インプラント:単独で成立するが、外科が必要
骨量や隣在歯の状態、清掃のしやすさなどを軸に歯科医院で相談しながら決定していきましょう。
見た目や固定感だけで決めず、清掃の維持と将来の治療余地を踏まえて選ぶことをおすすめします。
食いしばりがある場合の素材や設計上の配慮
食いしばりがあり、歯に強い力がかかる方は、素材と形を工夫して破損リスクを下げます。ナイトガードで荷重を分散し、被せ物は厚みを十分に確保していきます。
欠けやすい角(エッジ)を避け、必要に応じて咬頭を被覆します。素材は咬耗や清掃性を見て、金属やセラミック、ハイブリッドから提案します。「力のコントロール+厚みと形の最適化」で自分の歯を長持ちさせましょう。
治療回数と費用の考え方
治療回数は欠けの大きさと神経の関わりで変わります。費用は保険か自由診療、素材で幅があります。
まずは以下の表を参考に全体像を把握しましょう。
| 欠けの程度 | 主な治療 | 回数の目安 | 費用の考え方 |
| 小 | レジン修復 | 1回 | ・多くは保険適用 ・色合わせ等は個人差 |
| 中 | インレーやアンレー | 2〜3回 | ・素材で変動 (保険/自由診療) |
| 大 | クラウン+支台 | 2〜4回 | ・素材と設計で幅あり |
| 神経関与 | 根管治療+最終補綴 | 複数回 | ・根管の難易度と最終補綴で変動 |
除痛で終えず、最終補綴まで完了すると再発を抑えやすいです。最終判断は診査所見と画像で行います。
費用は個々の状況で変わるため、診査後に説明を受けて判断しましょう。
関連記事:オンライン歯科治療相談
虫歯で歯が欠けるのを防ぐ生活習慣

虫歯で歯が欠けるのを防ぐためには「酸の回数を減らす」「再石灰化を助ける」「清掃で菌を減らす」「定期的に見直す」の4つが大切になります。
ここでは、虫歯を防ぐ生活習慣を解説します。
飲食パターンの見直し
間食や甘い飲料の回数を減らすと、口の中が酸性になる時間を短くできます。
間食の回数が増えると脱灰が繰り返され、再石灰化が追いつきません。水や無糖のお茶を基本にし、就寝前の飲食を避けることをおすすめします。
職場や学校でも、甘味や酸味のダラダラ飲みをやめるだけで負担が下がります。1回の量よりも回数の管理を最優先で見直してみてください。
フッ素活用と再石灰化の促進
フッ素(フッ化物)は再石灰化を助け、脱灰に強い表面を作る助けになります。歯面にとどまる時間が長いほど効果を期待しやすいためです。
1,450ppmF前後の歯みがき剤を就寝前に使用し、すすぎは少なめにしてください。定期的なフッ素塗布については年齢やリスクで間隔が違うため歯科医院で相談するのがよいでしょう。毎日のコツコツケアと継続がポイントです。
プラークコントロール
歯ブラシだけでは届きにくい所を、フロスや歯間ブラシで補いましょう。
欠けやすい「歯と歯の間」「修復物の縁」から菌を減らすと、二次う蝕の広がりを抑えられます。
夜は鏡の前で歯を磨く順番を決め、同じ所を抜け漏れしないよう習慣化するのがおすすめです。道具は歯の隙間の幅に合うサイズを選びましょう。「道具の併用+順番化」で精度が上がります。
定期検診とプロケア
定期検診は「小さな進行」を早く見つけ、修復を小さく保ちやすくします。
歯と歯の間や詰め物の縁下は見落としやすく、拡大視野やX線(必要時)で早期発見につながります。
3〜6か月ごとにリスクに合わせて通院し、PMTC(専門清掃)やシーラントの要否、ホームケアの癖を一緒に見直しましょう。
小さく見つけて小さく治す方針が、結果として歯を長く守る近道です。
口腔乾燥と食いしばりへの対応
乾燥は、酸を中和したりミネラルを戻したりする唾液の働きを弱め、口の中が酸性に傾く時間を長くしてしまいます。その結果、脱灰が進みやすく、歯の欠けのリスクが上がります。
口呼吸や薬の影響で唾液が少ない場合は、保湿ジェルや水分補給、舌や唾液腺マッサージを取り入れてみましょう。食いしばりにはナイトガードで荷重を分散し、日中は「歯は離す」「唇は閉じる」を意識してみてください。潤いと力のコントロールを整えると、日常生活での歯の欠けを減らしやすくなります。
関連記事:甘いものを食べると歯が痛いのはなぜ?虫歯と知覚過敏の違い【決定版】
柳瀬院長の総評|生活習慣を見直して虫歯を防ごう
虫歯で歯が欠ける背景には、内側の弱りと噛む力の集中があります。見た目が小さくても内部で進む場合があり、歯科医院での早めの評価が負担を抑える近道です。
受診では、生活習慣の見直しや磨き方を学ぶことができます。小さな段階で治療を終えれば削る量を抑えやすく、自分の歯を長く保ちやすくなります。
日々の生活では、飲食の回数管理やフッ素の継続、フロス等の併用、定期検診、乾燥、食いしばりへの対応が柱です。
気になる欠けやしみ、詰め物の段差を感じた時点で受診し、現状を確認しましょう。診断に基づき、負担の少ない設計とホームケアの改善を合わせると、再発の確率を下げやすくなります。生活を整え、小さく見つけて小さく治す。その積み重ねが、歯を守る確かな道筋です。
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この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校



