「血餅が取れてしまった…」
「痛みは弱いけれど受診すべき?」
そんな不安を抱えている方は少なくありません。
抜歯後に「血餅(けっぺい)が取れたかも」と感じたときは、触らない、戻さない、清潔なガーゼで軽く圧迫が基本になります。ただし、強い痛みや悪臭、白い骨が見えたら早めに受診が必要です。
血餅は、抜歯後にできる穴(抜歯窩)を覆う口の中のかさぶたです。ここがフタになることで、骨や神経が外の刺激から守られ、細菌や食べかすが入り込みにくくなります。逆に血餅が失われると、刺激が直接当たりやすくなり、痛みのぶり返しや治癒の遅れにつながりやすくなります。
この記事でわかること
- 血餅の役割と見分け
- 取れたと感じた時の対処
- 受診の目安とセルフケア
- 当日〜1週間の過ごし方
親知らずや矯正で抜歯直後の方や「血餅が取れたかも」と不安を抱えている方は、ぜひ読んでみてください。この記事を読んで不安を解消しましょう。
目次
抜歯後にできる血餅とは?

抜歯後の穴には血液が集まり、しばらくするとゼリー状に固まった血のかたまりになります。これが血餅です。血餅は傷口のフタとなり、汚れや刺激の侵入を抑える働きを担います。
強いうがい、ストローで吸う動作、喫煙などで血餅が乱れると、治りが遅れたり痛みが出やすくなるため、血餅の性質を理解しておくと安心につながります。
血餅の役割
血餅は抜歯窩を覆い、次のような役割を果たします。
- 骨や神経への刺激をやわらげる
- 食べかすや細菌が入り込むリスクを下げる
- 痛みの再燃や治癒遅延を起こしにくくする
特に抜歯後24時間は血餅が定着していく重要な時間帯です。強いうがい、吸い込み、熱い飲食、喫煙、ストローは控えましょう。
血餅の見た目の変化
血餅の見た目は日ごとに変わります。最初は暗赤色ですが、数日すると白から灰色の膜が目立つことがあります。これはフィブリンなどの治癒過程で見られる被覆で、必ずしも膿ではありません。
以下の表は回復の目安です。
| 経過日数 | 見た目の目安 | 感じやすい症状 |
| 当日〜1日 | 暗赤色の血の膜 | ・鈍痛 ・にじむ出血 |
| 2〜3日 | 白〜灰色の薄い被覆 | ・違和感 ・軽い痛み |
| 4〜7日 | 被覆の縮小と肉芽 | ・食事のしやすさが向上 |
白や灰色の被覆は、傷が治る途中でよく見られる自然な見た目の変化です。一方で強い悪臭やズキズキする拍動痛、白い骨がはっきり見える場合は受診の合図です。見た目だけで判断せず、痛みが増えていないか、においが強くなっていないかなど経過も合わせて確認しましょう。
血餅についてのよくある誤解
「血餅はすぐ取れるもの」と思われがちですが、多くの場合は静かに安定していきます。過剰なケアがかえって剝がれの引き金になります。
以下は避けたい行動です。
- 白いかたまりは膿と決めつけない
- 舌や綿棒で位置合わせをしない
- 強いうがいをしない
- ストロー水分補給をしない
- 熱い飲食をすぐに取らない
- 喫煙を吸わない
白は治癒膜のことが多いです。たとえ血餅が取れてしまっても元に戻す行為しないようにしましょう。
清潔はやさしい洗口で十分です。ストローと喫煙は陰圧や虚血の誘因になるため控えるようにしてください。
抜歯後に血餅が取れたときの対処法

抜歯後に血餅が「取れたかも」と感じたら、まず刺激を止めるのが最優先です。触らず、戻さず、清潔なガーゼで静かに圧迫します。強いうがいやストロー、喫煙は避け、当日は安静に過ごしてください。
血餅が取れたときにすべきこと
血餅が取れたかもしれないときは、刺激を止める、圧迫する、安静にするの順で対応します。確認のために何度も覗き込んだり触ったりしないのがポイントです。
抜歯窩は、治る途中の工事現場のような状態で、余計な振動や水流が入ると工事(治癒)がやり直しになりやすいためです。応急処置はシンプルに留め、必要があれば歯科医院で整えてもらうほうが早く落ち着きます。
すべきこと
- 清潔ガーゼで10〜15分の圧迫する
- 必要時のみ、少量の水で軽くすすぐ
- 頬の外から短時間の冷却をする(布で包んだ保冷剤)
- 食事はやわらかい物、反対側で咀嚼する
- 入浴は短めに激しい運動は中止する
- 就寝時は枕を少し高くする
しないほうがよいこと
- 強いうがい
- 口をすぼめて吸う動作
- ストローの使用
- 喫煙
- 熱い飲食
- アルコール
- 舌や綿棒での接触
- 義歯やマウスピースの装着(指示前)
圧迫でにじむ出血は落ち着く場合が多いです。舌や綿棒で穴を探ると刺激に変わります。
受診の目安
「血餅が取れたかも…」と感じた直後に自己判断だけで様子見を続けると、痛みが長引いたり別の症状につながる恐れがあります。
無理をせず、以下の表を参考に受診を検討してください。
| 状態 | サイン | 推奨対応 |
| 痛みの増強 | ・抜歯後2〜5日にズキズキ強くなる | 早めに受診 |
| 見た目 | ・白い骨が見える ・穴が空っぽに見える | 早めに受診 |
| においや味 | ・強い悪臭や不快な味が続く | 受診を検討 |
| 出血 | ・30分以上の圧迫でも止まりにくい | 受診 |
| 全身 | ・口が開けにくい ・しびれや発熱、強い腫れ | 受診 |
| 不安 | ・痛みは弱いが心配が続く | 電話相談可 |
上記はあくまで目安です。症状の出方には個人差があります。早めに歯科医院を受診すると、洗浄や保護材、鎮痛の処置でつらい期間を短くできる可能性があります。
判断に迷ったら、歯科医院へ連絡しましょう。夜間や休日の連絡先や再診の流れを事前に確認しておくと安心です。
抜歯後の血餅を守るためにするべきこと3選

血餅を守れれば、痛みのぶり返しや治癒遅延のリスクを下げやすくなります。大切なのは「刺激を避ける」「正しい止血と冷却する」「生活管理を整える」の3点です。最初の1週間は慎重に過ごし、無理を重ねない方針で進めましょう。
刺激を避ける
初期は血餅がまだ不安定の状態が続きます。強い水流や陰圧、熱刺激などは大敵です。日常の動作から刺激を引き算していきましょう。
以下のように刺激を避けるように心がけてください。
- 強いうがいはしない
- ストローを使って飲み物を飲まない
- 喫煙をやめる
- 熱い飲食を取らない
- 舌や指で触らない
- 抜歯側で噛まない
刺激を減らすだけで、血餅は落ち着きやすくなります。見た目が気になっても触れないようにしましょう。
正しい止血と冷却
抜歯後のにじむ出血は、清潔ガーゼでの圧迫で落ち着くことが多いです。冷却は頬の外側から短時間で行いましょう。口の中でガーゼを安定させ、噛む力は強すぎないよう調整してください。
以下は止血と冷却方法です。参考にしてみてください。
- 清潔ガーゼを当てて10〜15分噛む
- 続く出血は新しいガーゼで再圧迫(1〜3回)
- 強いうがいはしない
- 唾は静かに飲み込む
- 保冷剤は布で包み、頬の外から10分冷却→10分休憩
- 氷を口内に直接当てない
- 噛む力は軽くする
圧迫と間欠冷却で多くは落ち着きます。長時間の連続冷却や、口内を直接冷やす行為は控え、乾いた清潔の維持を優先しましょう。
生活管理
抜歯後の回復に向けて「やわらかく」「清潔に」「無理をしない」が合言葉です。血餅を揺らす刺激を減らし、休息と栄養で土台を整えます。温めすぎや強い動きは避け、常温中心の食事と静かな口腔環境を保ちましょう。処方薬や洗口液があれば、指示に合わせて使います。
生活管理の要点
- 食事:柔らかい常温、反対側で咀嚼
- 水分:常温の水や薄いお茶
- 歯磨き:当日は控え、翌日やさしく
- 洗口:許可後に少量で静かに
- 睡眠:頭をやや高く、横向き推奨
- 活動:激しい運動は48時間控える
- 飲酒:数日は控える
- 喫煙:再開は可能な限り延期
最初の数日は、不便ですが食事や水分補給などに注意を払いましょう。違和感があっても触らず、静かな過ごし方を意識してください。
関連記事:抜歯後の食事は何時間後からOK?食事開始の3つの条件とメニューガイド
抜歯後の当日〜1週間の過ごし方

最初の1週間は、血餅を守りつつ腫れと痛みを抑える過ごし方が大切です。食事は段階的に戻し、清掃はやさしく開始しましょう。熱や陰圧、摩擦などの強い刺激は避けてください。アルコールと運動は早期再開を控え、体調の波を見ながら少しずつ生活を整えましょう。
食事
食事は日数に合わせて段階的に選ぶと、血餅を揺らしにくくなります。硬さや温度、刺激に気をつけ、抜歯側では噛まない方針で進めてください。
以下の表は経過日数に合わせた食事の目安です。
| 経過日数 | 食べ方の目安 | 推奨メニュー例 |
| 当日 | 常温でやわらかいものから | ・ヨーグルト ・ゼリー ・プリン |
| 1〜2日 | 飲み込みやすいもの | ・お粥 ・ポタージュ ・茶碗蒸し |
| 3〜4日 | やわらかめのものを咀嚼 | ・うどん ・煮野菜 ・やわらかい豆腐 |
| 5〜7日 | 少しずつ通常へ | ・白身魚の蒸し物 ・軟飯 ・卵料理 |
辛味や酸味、炭酸、熱い汁物は刺激になりやすいです。ナッツやせんべいなど硬い食品、ゴマなど細かい粒は穴に入り込みやすいので避けましょう。水分は常温中心で、ストローは使わないようにしてください。
口内清掃と睡眠
清掃は「やさしく」「短時間」「範囲限定」で始めます。睡眠は出血と腫れを抑える姿勢を意識しましょう。
以下の項目に気をつけ、口内清掃や睡眠をとりましょう。
- 当日は抜歯部分の歯磨きを控える
- 翌日から周囲以外をやさしくブラッシングする
- ぬるま湯で静かに洗口する
- 電動ブラシは数日は使用しない
- フロスは創部を避けて短時間で使う
- 就寝は頭を少し高くする
- うつ伏せや強い食いしばりは避ける
清掃の目的は口内の清潔を維持することです。見た目の確認で何度も触れると刺激になります。
アルコールや運動の再開目安
アルコールと運動は、血流増加や体温上昇で出血や痛みを招きやすい行為です。早い再開は避け、段階的に戻していきましょう。
アルコールは少なくとも2〜3日は控えるのが無難です。刺激やにおいが強い酒類は、違和感が残るあいだは見合わせてください。
運動は48時間ほど休み、散歩など軽い活動から再開を検討します。筋トレやランニングなど強度の高い運動は、痛みや腫れが落ち着いてから様子を見ながらスタートしてください。
どちらも再開後にズキズキする痛みや出血があれば、控えるようにしましょう。
関連記事:親知らず抜歯後いつから普通の食事に戻れる?当日〜1週間目の不安を解消
痛くないのに血餅がない?ドライソケットの基礎と受診目安

抜歯後に血餅が見えない場合は珍しくありません。初期は白から灰色の薄い膜に見えることもあります。痛みの経過やにおいの変化を合わせて確認してください。
増悪がなければ様子見も選択肢の一つです。ただし、悪臭やズキズキ痛、白い骨が見えるときは早めに歯科医院へ相談しましょう。
ドライソケットの一般的な経過と自覚症状
ドライソケットは、血餅が外れて骨が見えやすい状態です。抜歯直後は落ち着いているのに、2〜5日目に入ってズキズキと強い痛みが出やすいのが特徴です。痛みは顎から耳、こめかみへ広がることもあります。口臭や口の中の不快な味を伴う場合もあります。
一方で、見た目の赤い腫れや発熱は目立たない場合が多いです。いわゆる「化膿による腫れ」とは違い、見た目ではわかりづらいですが、痛みが強いのが特徴です。
抜歯窩が空っぽに見え、白っぽい骨面がのぞくことがあります。痛みが増す、においが強まる、白い面がはっきり見えるなどの変化があれば、早めに歯科医院へ相談しましょう。
痛みがない場合の様子見と連絡のタイミング
抜歯後に痛みが弱い、または無い場合は、24〜48時間の経過観察を検討します。強いうがいは避け、やわらかい食事と清潔の維持に集中してください。見た目の変化を確認したくなる気持ちはわかりますが、何度も触れないようにしましょう。
以下の変化が出た場合は歯科医院へ連絡する合図です。
- ズキズキ痛が増える
- 鎮痛薬が効きにくい
- 悪臭や不快な味が強まる
- 白い骨の面がはっきり見える
- 出血がぶり返す
不安が続く時は、痛みの強弱に関係なく相談しましょう。早めの洗浄や保護材の処置で、つらい期間を短縮できる場合があります。
受診が推奨されるサイン
「血餅が取れたかも」と感じたあとに自己判断で様子見を続けると、痛みが長引いたり別の不調につながる恐れがあります。
以下に挙げるサインは、早めの診察で負担を軽くできる可能性がある目安です。
| サイン | 目安 | 対応 |
| ズキズキ痛の増悪 | ・抜歯後2〜5日に悪化 | 早めに受診 |
| 見た目の異常 | ・白い骨が見える ・穴が空っぽ | 早めに受診 |
| においと味 | ・強い悪臭や不快な味が続く | 受診を検討 |
| 出血 | ・30分以上の圧迫でも止まりにくい | 受診 |
| 全身 | ・口が開けにくい ・しびれ ・発熱 ・強い腫れ | 受診 |
| 心配や不安 | 痛みが軽くても不安が続く | 電話相談 |
症状の出方には個人差がありますが早めに受診すると、洗浄や保護材、鎮痛の処置で回復が前に進む可能性があります。
関連記事:親知らず抜歯後のドライソケットとは?激痛の原因と正しい対処法を解説
よくある質問と回答

抜歯後の血餅について寄せられる疑問に、端的にお答えします。強い痛みや悪臭などの変化があれば、早めに歯科医院へ連絡しましょう。
抜歯の翌日に血餅が取れた。痛みがなくても受診すべき?
痛みが弱い場合は、まずは自宅で安静と圧迫止血で様子を見ることも選択肢の一つです。
初期の白から灰色の膜は生理的な変化で、必ずしも異常ではありません。刺激を避ければ、回復は進みやすいでしょう。
ただしズキズキした痛みが増す、悪臭、白い骨面が見えるなどが出たら受診の合図です。不安が強い場合は、痛みの強さに関係なく相談してください。
取れた血餅を戻していい?
取れてしまった血餅は戻さないようにしましょう。
乾いた血塊や食片を押し戻すと、創面をこすり、細菌や異物を奥へ押し込むおそれがあります。かえって痛みや遅れにつながります。
清潔ガーゼで10〜15分の軽い圧迫をし、頬の外から短時間の冷却に専念しましょう。
何日目まで血餅は取れやすい?
特に24時間は不安定で、2〜3日目まで注意が必要です。
形成直後は陰圧や水流で剝がれやすい段階です。3〜4日目以降は被覆が落ち着き、刺激を減らせば安定しやすくなります。
強いうがいをやめ、やわらかい常温食を選びましょう。抜歯側で噛まない、舌や綿棒で触らない、熱い飲食や喫煙を控えるといった基本を徹底してください。
普通の食事はいつからOK?
おおむね5〜7日目を目安に段階的に戻します。
初期は血餅保護が最優先で、硬さや温度、粒の刺激を減らす必要があります。痛みやにおいの増悪がなければ、少しずつ幅を広げます。
当日はプリンやゼリー、1〜2日はお粥やポタージュ、3〜4日はうどんややわらか豆腐へと段階的に通常食へ戻します。ナッツやせんべい、炭酸や辛味は後回しにしてください。
ガーゼはどのくらいの強さで押さえる?
ガーゼは軽く、しっかりと10〜15分押さえてください。噛み潰すほどの強さは不要です。
適度な圧で止血しつつ、過圧による組織の刺激や痛みを避けられます。にじむ出血は新しいガーゼで再圧迫します。最大でも3回程度に抑えると良いでしょう。
唾は静かに飲み込み、強く吐き出さないようにしてください。頬の外から保冷剤を布で包み、10分冷却し、10分休憩を数セット行うと落ち着きやすいです。
関連記事:親知らずの穴に詰まった食べかすが取れない?対処法を徹底解説!
まとめ|治るために必要な血餅を守ろう
回復の近道は、血餅を守ることです。触らず戻さず、血が出る場合は清潔ガーゼで軽く圧迫しましょう。強いうがいやストロー、喫煙はやめるようにしてください。
血餅は口の中のかさぶたの役割をしています。骨と神経を覆い、刺激を遮り、治りの土台になります。早期に失うと痛みがぶり返し、治癒が遅れやすくなります。
当日は圧迫と外から短時間の冷却、食事は常温のやわらかい物から段階的に進めましょう。清掃は翌日からやさしく再開し、抜歯側は避けます。ズキズキ痛が2〜5日に増える、強い悪臭、白い骨が見える、30分以上の圧迫でも出血が続くなどの場合は相談の合図です。
迷ったら触れず、早めに歯科医院へ連絡してください。適切な洗浄や保護材、鎮痛の調整で負担を軽くしましょう。
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この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校



