「虫歯がひどくて神経までいったら、痛みはどれくらい続くの?」
「治療後のズキズキが止まらない。受診の目安を知りたい。」
このような不安を抱えているものの、忙しい毎日で受診を後回しにしている方は少なくありません。
夜に増悪する自発痛や温かい食べ物や飲み物でもしみる痛みは神経に近いサインです。数日〜1週間で軽くならない、腫れ・発熱・眠れない強さがあれば受診が必要です。
歯の神経の炎症は進むほど刺激に反応しやすくなり、やがて根の先に波及してしまいます。
この記事では、不安を整理し、今夜の対処や治療が必要な場合を順を追って解説します。
【この記事でわかること】
- 歯の神経の役割と、虫歯が近づいたときの痛みの変化
- 神経を残すか抜く判断の基準と比較
- 術後の痛みの期間目安と再受診ライン、今夜できる対処
受診の目安とチェック方法を理解して、不安を解消しましょう。ぜひ、最後まで読んでみてください。
目次
基礎知識|歯の神経(歯髄)と虫歯の痛み

歯の神経は痛みを知らせるだけでなく、防御や修復にも関わります。虫歯が近づくほど痛みは変化し、進むと夜に強まる自発痛へ移るでしょう。
ここでは、歯の神経の役割や虫歯が神経に近づくと起こる痛みを説明します。
歯の神経の役割
歯の神経の主に痛みのセンサー機能の役割を果たしています。熱・冷・圧の刺激を感じ取り、私たちに異常を知らせてくれます。
次に大きな役割として、防御と修復です。刺激に反応して象牙質の壁を厚くし、内部を守ります。
さらに血管と神経の通路として、歯の内部に栄養と酸素を届ける働きも担っています。
例えば、冷たい水でキーンと短くしみた段階なら、神経が危険を知らせている状態と言えるでしょう。早期に刺激源を除けば落ち着く場合があります。逆に、温かい味噌汁でズーンと長引く痛みは、神経の炎症が進んだ合図です。
歯の神経は「知らせる・守る・養う」の三役もの働きをしています。神経を残せる可能性があれば、残す方がよいでしょう。
虫歯が神経に近づくと起こる痛みの推移
虫歯が神経に近づくと、痛みは段階的に変化します。始めは、冷たいものや甘いもので数秒だけしみるでしょう。
次に温かい飲食でも10秒以上続く鈍い痛みへ移ります。さらに進むと、何もしていなくてもズキズキし、夜や横になったときに強まります。
噛む力で響く痛みが出たら、根の先への波及を疑ってください。
例えば、最初は、アイスで数秒だけしみていたものが、数日後には、熱いコーヒーで数十秒しみたり、深夜にズキズキして眠れなくなったりと痛みが増してくるのです。
結論として、痛みが長く、強く、夜に悪化するほど深部に近いと考えましょう。
「痛みが消えた=治癒ではない」ケース
急に痛みが消えた場合は、安心してはいけません。歯髄が弱り、神経が反応しなくなっただけの場合があります。
内部で細菌が増え、やがて根の先に膿がたまり、噛むと強い痛みや頬の腫れへと進みます。
具体例として、数日前は脈打つ痛みで眠れなかったのに、翌朝は楽になった場合は、歯髄が弱ってしまったと疑われます。
そのまま放置して一週間後、歯ぐきにニキビ状の腫れが出て、押すと膿が出る状況に進むことがあるため、注意してください。
痛みが消えた後でも安心せず、歯科医院へ相談したり、早めの受診をしたり指示を受けるようにしましょう。
関連記事:歯の神経(歯髄)の役割と虫歯の進行
虫歯の治療方針の決め方

痛みの種類と検査の結果を合わせて、神経を残すか抜くかが決まります。回数や予後の見通しも最初に整理しておきましょう。
適応の基準
神経を温存できるケースは軽い炎症、抜髄は強い炎症が目安です。炎症が深いほど神経が回復しにくいためです。
神経を残せる(温存)可能性がある目安は以下のとおりです。
- 冷たい飲み物や甘い物でしみる(数秒で消える)
- あたたかい飲み物やスープでは痛みが短く、すぐおさまる
- 夜は眠れる。日中に強いズキズキは出ない
神経を取る治療(抜髄)を検討する目安は以下のとおりです。
- 何もしていなくてもズキズキする
- 夜に痛みが強くなる
- あたたかい飲み物でしみが長く続く(30秒以上、じんじん残る)
- 噛むと響く、歯を軽く叩くと痛い
- 頬や歯ぐきが腫れる、熱が出る
目安は一般例です。最終判断は診察と検査で決まります。迷ったら早めに受診しましょう。
神経温存 vs 抜髄の比較表
神経を温存するのか抜髄かの判断は、基本的に歯科医師との相談で決まりますが、選択できる場合もあります。
どちらの治療をするかで、痛みの抜け方・回数・歯の強度が変わります。最終的に自分で判断できる場合には、以下の比較表を参考にしてみてください。
| 項目 | 神経温存 | 抜髄(根管治療) |
| 痛みの改善 | 段階的に軽快 | 早期に軽快しやすい |
| 通院回数 | 少〜中回数 | 複数回が基本 |
| 1回の時間 | 短め〜中程度 | やや長め |
| 歯の強度 | 保たれやすい | 脆くなりやすい |
| 追加処置 | 経過観察が軸 | 被せ物で補強が軸 |
| 費用の傾向 | 小〜中 | 中〜大(補綴で変動) |
早く痛みを抜きたいなら抜髄、歯を長持ちさせたいなら神経温存をおすすめします。虫歯の進行具合では、神経温存ができない場合もあるため、歯科医院で相談し、後悔のない選択をしましょう。
神経を抜く治療のメリット・デメリット
痛みの早期解放と交換条件の見極めが大切です。感染源を除けば楽になる一方、歯が弱くなるためです。
神経を抜く治療のメリットは、激しい痛みから早く解放される点です。感染源を取り除き、腫れや発熱の再発を抑制します。
歯は抜かずに残せるため、被せ物で噛む力や見た目も整います。夜間のズキズキで眠れない負担も軽くなるでしょう。
一方のデメリットは、神経を失うと歯が脆くなり、割れのリスクが上がる点です。色調が変わり、見た目に影響します。
根の内部に細菌が残ると再感染で再治療が必要になります。複数回の通院や費用負担も増えるため、歯科医師とよく相談しましょう。
関連記事:神経まで進んだ虫歯の治療法
術後の虫歯の神経の痛み|期間の目安と再受診ライン

処置後の違和感は珍しくありません。多くは数日で落ち着きますが、強まる痛みや腫れが続く場合は受診を検討してください。
ここでは、痛みの期間と受診の目安を説明します。
術後痛はどれくらい続く?
充填や仮詰めの後は、当日〜2、3日はしみやすいです。神経を残す処置の後は、数日〜1週間で落ち着く流れが一般的です。
抜髄の後は、処置直後の鈍い痛みや噛むと響く感覚が出やすいですが、日ごとに軽くなるでしょう。
例えば、初日は噛むとズンと響く、3日目には違和感レベル、7日目には意識しない程度、この変化が目安になります。
正常・注意・受診ライン
処置後は、違和感が続き、不安になることもあるでしょう。
以下のラインを判断基準にしてみてください。
- 正常:日ごとに軽くなる、眠れる、食事は工夫で対応可
- 注意:1週間たっても同じ強さ、噛むと強く響く、鎮痛薬が手放せない
- 受診:腫れや発熱、膿が出る、夜眠れない強い痛み、痛みが急に増える
判断に迷う時は、早めに連絡してください。強い症状が出たら受診を優先しましょう。
長引く痛みの主因と対処
痛みが長引く場合には、大きく3つの理由があります。
1つ目は、詰め物の高さが合っていない場合です。高い詰め物で噛むと痛い場合は、咬み合わせ調整で楽になります。
2つ目は、根の中に炎症が残る場合。この場合は、消毒の追加が必要になることがあります。
3つ目は、歯にヒビが入っている場合です。ヒビが入っている歯は、被せ物で補強する判断や、深い場合は抜歯の検討が必要でしょう。
どれも自己判断で薬を増やすより、症状と経過を伝えて受診してください。早い相談が回数の短縮につながります。
関連記事:虫歯が神経まで進むと症状はどうなる?
今夜からできる対処法とNG行動

夜に強まる痛みでつらい時は、刺激を減らし、眠れる状態へ近づけましょう。自宅でできる対処と、避けたい行動を整理します。
自宅でできる対処
まずは痛みが増えない環境づくりです。無理なく続けやすい手順で取り組みましょう。
- 冷熱の極端な飲食を避ける
- 反対側でやわらかい食事
- ゆっくり歯みがき+フロス
- アルコール不使用の洗口液
- 枕を高くして就寝
- 頬の外側を短時間で冷却
自宅でのケアが痛みを和らげるコツです。ケアをすることで、違和感にも気づきやすくなるため、継続しましょう。
市販鎮痛薬の一般的な扱いと効かない時のサイン
服用は用法・用量を守りましょう。空腹での服用は避け、過量はしないでください。
痛みが続くあいだの一時しのぎとして使い、数日にわたり、薬に頼りきりにしないよう心がけましょう。
腫れ・発熱・夜眠れない強さ・効きが弱いがそろう場合は受診の合図です。早めに相談してください。
やってはいけないこと
歯の痛みを増長させるような逆効果になる行動は避けましょう。痛みが強まったり、炎症が長引く原因になります。
以下は、やってはいけないことの具体例です。
- 患部を指や舌で触る
- 熱い風呂に長く入る
- 大量の飲酒
- 激しい運動
- 喫煙
- 独断で薬を併用・増量
迷う時は我慢せず、歯科医院へ連絡してください。強い症状が出たら受診を優先しましょう。
再発予防と長持ちのコツ

痛みが落ち着いた後は、再発を防ぎ、歯を長持ちさせる準備に切り替えましょう。検診の間隔と日々のケアを整えるだけで安定しやすくなります。
定期検診の目安
基本の目安は3〜6か月です。根管治療や被せ物の後は、初年度だけ間隔を短くするとよいでしょう。
検診では、虫歯や歯周のチェックに加え、噛み合わせの微調整や清掃の見直しまで行うのがおすすめです。
例えば、食いしばりが強い人は、歯面の擦り減りや詰め物の浮きを早期に発見できます。早めの対応で通院回数を減らせるため、予定に入れておきましょう。
神経を抜いた歯の寿命を延ばすポイント
神経を抜いた歯は割れやすいため、守り方の工夫が要ります。次の手順で負担を減らしましょう。
- 全周を覆う被せ物で強度を確保
- ナイトガードで食いしばり対策
- フロス+フッ化物で再感染を予防
- 甘味・間食の回数管理で酸の時間を短縮
- 噛み合わせの見直しで一点集中の力を回避
- 仮封の欠けや脱離に気づいたら連絡
小さな違和感のうちに受診すれば、簡単な治療で済む場合もあるため、異変に気づいたら歯科医院に相談しましょう。
虫歯ではない歯痛(非歯原性)

検査で虫歯や歯周の異常が見当たらないのに痛む場合があります。原因の切り分けを先に進め、遠回りを避けましょう。
筋・筋膜性・神経障害性・神経血管性
筋・筋膜性の歯痛は、顎やこめかみの筋肉のこりが発端です。頬を押すと同じ痛みが再現しやすく、朝の目覚め直後や長時間のデスクワーク後に強くなりがちです。食いしばりや歯ぎしりがある人に多く、歯そのものより周囲の筋肉が原因になります。
神経障害性の歯痛は、電気が走るような鋭い痛みが短時間で出ます。冷風や洗顔で誘発されるケースがあり、発作は数秒単位で繰り返すでしょう。刺激を避けても突然走るため、日常の負担が大きくなりやすいです。
神経血管性の歯痛は、片頭痛と重なる拍動性の痛みが特徴です。光や音で悪化しやすく、頭痛と歯の痛みが同じ側に出る傾向があります。
歯に明らかな異常がなくても強いズキズキが続く場合は、これらの症状がないか確認しましょう。
上顎洞性・心臓性・気圧性・心理社会的・特発性
上顎洞性の歯痛は、鼻づまりや鼻水、前かがみでの頬の圧重感を伴いやすく、上の奥歯がまとめて重苦しくなります。風邪明けや花粉の季節に増える傾向があります。
心臓性の歯痛は、胸の圧迫感や息切れと一緒に顎から歯へ広がる痛みが出るでしょう。階段上がりや早歩きで強まる場合は要注意です。歯が原因に見えなくても、まず安全を優先しましょう。
気圧性の歯痛は、飛行機や登山で急に強くなります。下降時や着陸前にズンと響くなら、気圧変化への反応を疑ってください。
心理社会的な背景が強い歯痛は、検査で異常が見つからないのに痛みが続きます。眠りの質や不安の波と連動しやすく、痛みの感じ方が日ごとに変わりますので、様子をみながら判断しましょう。
特発性の持続痛は、明確な原因が見当たらない持続的なうずきです。
これらは、歯科医院でも異常が見つからないため、専門外来での受診が必要です。歯科医院での診察の際に相談すると、専門外来を紹介してもらえる場合もあるため、悩まずに相談しましょう。
どの診療科に相談するかの目安
まずは歯科で歯原性の検査から始めましょう。異常が見当たらない、もしくは全身の症状が先に立つ場合は、以下を目安にしてください。
| 症状や経過の手がかり | 優先したい相談先 |
| 鼻づまり・鼻水・前かがみで頬が重い | 耳鼻科 |
| 片側の拍動性頭痛・光や音で悪化 | 神経内科 |
| 胸の圧迫感や息切れと同時に顎〜歯が痛む | 循環器内科 |
| 強いこりと連動、押すと同じ痛みが再現 | 歯科/口腔外科 |
| 刺激で電撃痛が数秒、反復する | 神経内科/ペインクリニック |
| 画像異常が乏しい持続痛 | 口腔顔面痛の専門外来 |
受診時は、痛みの出やすい時間帯、誘因、続いた秒数や分単位、眠りの状態をメモにまとめて持参してください。診断までの道のりが短くなります。
関連記事:歯が痛いのに虫歯以外?原因と対処法をわかりやすく徹底解説!
よくある質問と回答

神経を抜くほどの虫歯になった場合は、処置前でも痛みが出て不安になるものです。処置後も痛みが続くのではないかとさらに不安を募らせているのではないでしょうか。
ここでは、虫歯の治療の際の痛みなどについての質問にお答えします。
神経まで行くと必ず痛む?無痛で進む例は?
痛みは必ず出るものではありません。
強いズキズキが続いた後、急に楽になる流れは歯髄の弱りや壊死が疑われます。
痛みが薄れても内部で感染が広がる場合があります。受診を先延ばしにせず、検査を受けましょう。
神経を抜く麻酔は痛い?抜歯とどちらが痛い?
麻酔が効けば処置中の痛みは小さくできます。抜髄と抜歯のどちらが痛いかは個人差が大きいです。
処置後は鈍い痛みや噛んだ時の響きが数日出ることがあります。不安があれば麻酔の効きやすさや追加投与を相談してください。
術後のズキズキは何日で治まる?超えたら受診?
充填や仮詰めなら当日〜2、3日、神経温存は数日〜1週間で軽くなる流れが目安です。
抜髄後も日ごとに右肩下がりで痛みがおさまるでしょう。1週間たっても強さが変わらない、腫れ・発熱・夜眠れない場合は受診をおすすめします。早めに相談してください。
「虫歯じゃない」と言われたのに痛いのはなぜ?
筋肉のこり、片頭痛、上顎洞の炎症、神経の過敏など歯以外の原因が関係する場合があります。
痛む時間帯や誘因、続いた秒数や分、眠りの状態をメモにまとめ、再診で共有しましょう。適切な科への紹介で近道になります。
まとめ|虫歯かな?と思ったら、放置せずに受診しましょう
夜に強まるズキズキや、温かい飲食でも長引くしみは、神経に近い合図です。数日〜1週間で軽くならない、腫れや発熱が出る、眠れない強さが続くなら受診してください。
神経を残すか抜くかは検査で決まります。迷う前に検査をし、歯科医院へ相談しましょう。
受診の合図
- 自発痛が続く、夜に悪化
- 温でしみが長く残る
- 噛むと響く、歯ぐきの腫れ
- 発熱、膿、痛みが急増
今夜の対処
- 冷熱の極端を避ける、反対側でやわらかい食事
- ゆっくり歯みがきとフロス、アルコール不使用の洗口液
- 枕を高くして就寝、市販薬は用法・用量どおり
受診準備
- 痛む時間帯、誘因、続いた秒数や分をメモ
- 服薬歴、治療歴、アレルギーの有無を整理
- 強い症状が出たら電話で相談し、早めに予約
早め早めの行動が、回復への近道です。つらい痛みから離れて、普段の生活へ戻していきましょう。
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当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校



