虫歯に発熱が重なると「いつまで様子を見て良いのか」と不安になるでしょう。
熱の持続は、原因である歯の感染の強さと治療で変わります。一般的な傾向としては、治療が始まれば数日で落ち着くことが多い一方、処置が遅れると数日〜1週間以上続く場合があります。
この記事では、虫歯による発熱の仕組みや原因から受診のタイミングまでを説明します。
発熱は身体からの警告のサインです。我慢せずに歯科医院へ相談したり、受診したりと根本的な解決策を探しましょう。
目次
虫歯で発熱する仕組みと主な原因

発熱は、虫歯の細菌に体が反応して起きる炎症のサインです。虫歯が深く進むと、歯の神経(歯髄)や根っこの先まで細菌が広がり、膿や腫れを作ります。
すると炎症物質が増え、体温が上がりやすくなります。顔が腫れる、飲み込みづらいなどが出れば要注意でしょう。
代表的な病気と風邪との見分け方を説明します。
歯髄炎・根尖性歯周炎・歯性感染症とは
歯髄炎は、虫歯が神経まで進んだ状態です。冷たい物で「キーン」と痛む、夜にズキズキ強くなるといった変化が出やすいでしょう。
歯髄炎が悪化すると神経が弱り、痛みが一時軽くなるかもしれませんが、細菌は根っこの先へ広がります。
根尖性歯周炎は、根の先に膿がたまる病気です。噛むと響く、歯ぐきが腫れる、熱が出ることがあります。頬がはれる、口が開きにくい、飲み込みづらいといった全身に近いサインも要警戒です。
歯性感染症は、こうした感染が周りの組織へ広がった状態を指します。重い場合は入院治療になることもあります。
痛みや発熱が続くなら自己判断で放置せず、早めに受診しましょう。
風邪や扁桃炎との違い
風邪や扁桃炎は、のどの痛みやせき、鼻水が主な症状です。体のだるさが前に出ることが多いでしょう。
一方、歯が原因の熱では特定の歯がズキズキする、噛むと痛む、歯ぐきや頬が片側だけ腫れる、といった場所がはっきりした痛みが目立ちます。
また、歯をトントンと軽くたたくと痛みが強まる場合は、歯の根のトラブルかもしれません。
のど風邪っぽい症状と迷うときは、無理をせず歯科へ相談してください。高熱や飲み込みづらさがあるなら、医療機関に早めに連絡しましょう。
発熱はいつまで続く?一般的な経過の目安

発熱の長さは、感染の広がりと処置の早さで変わります。治療が始まれば、数日で下がり始める流れが多いでしょう。
未治療だと、熱や腫れがぶり返す場合もあります。数時間単位の変化も手がかりになります。日ごとのサインと注意点を確認しましょう。
数時間〜数日の経過で変わるサイン
処置の当日から翌日は、痛みや熱が「波」を打つかもしれません。体は細菌と戦っており、完全に落ち着く前に上がり下がりを見せやすいためです。
むやみに冷やし過ぎたり、噛みしめたりすると悪化する恐れがあります。目安表で受診のタイミングを確認しましょう。
| 時期 | からだのサイン | 自宅での対応 | 受診・相談の目安 |
| 当日〜半日 | ・ズキズキが波打つ ・微熱 | ・外から短時間の冷却 ・安静 | 強い痛みで眠れないなら相談 |
| 翌日 | ・37℃台に落ち着く ・腫れは小さく | ・市販薬の適正使用 ・水分補給 | 38.0℃以上へ上がるなら受診 |
| 2〜3日 | ・痛みと熱が下がる傾向 | ・食事はやわらかめ ・刺激回避 | 改善が乏しいなら再受診 |
| 3日以降/悪化 | ・腫れ拡大 ・口が開きにくい | ・安静のみでは不十分 | 速やかに歯科、嚥下困難は救急 |
病状が日に日によくなれば、回復の合図でしょう。逆に、夜になるたび悪化する、頬の腫れが広がる、発熱が38.0℃以上へ再上昇するなら受診が必要です。市販薬で痛みを抑えても解決にはなりません。
長引く・悪化するケースの背景
長引く背景には、以下の要因があります。
- 根の中に細菌が残る
- 膿が出切っていない
- 原因歯の見落とし
糖尿病や免疫を下げる薬、喫煙、寝不足や脱水も治りを鈍らせやすいでしょう。抗菌薬だけで様子見を続けると、熱は一時下がっても再燃しがちです。無理をせず、根本の治療完了まで通院を続けましょう。
危険サインと受診のタイミング

発熱だけでなく、顔の腫れや飲み込みづらい、息苦しいという症状が重なる場合は、放置は危険でしょう。
受診先は基本は歯科医院ですが、全身の不調が強いなら救急も視野に入ります。迷ったら電話相談で確認しましょう。
すぐ動く必要がある目安と夜間や休日にとるべき行動を説明します。
すぐ受診・救急相談の目安
発熱や痛みは上下しやすく、判断に迷うかもしれません。しかし、全身に広がるサインが出たら先のばしは禁物です。
まずは歯科へ、呼吸や嚥下の不調が強ければ救急相談をしましょう。
下のリストを手元に置き、当てはまるかをチェックしてください。
- 38.0℃以上が続く、悪寒やふるえ
- 顔や顎の急な腫れ、左右差がはっきり
- 口が開きにくい、飲み込みづらい、よだれが増える
- 息苦しい、声がこもる、首のはれまで広がる
- 鎮痛薬が効きにくい、夜に痛みが強まる
- 糖尿病・妊娠・免疫を下げる薬の内服中
- 子どもや高齢者で元気がなく水分がとれない
一つでも強く当てはまるなら当日中の受診を検討してください。受診時は体温の記録、痛みの経過、内服状況(市販薬も含む)をメモにして渡すと、診断がスムーズになります。
夜間・休日の一時対応と翌日の行動
夜間や休日は不安になりがちです。無理をせず、症状を悪化させないように過ごしましょう。
以下のリストを参考に、応急のポイントを押さえ次にとる行動を整理してみてください。
- 安静を保ち、頭を少し高くして横になる
- 頬の外からタオル越しに10〜15分の間欠冷却
- 水や経口補水で脱水を防ぐ、アルコールは避ける
- 市販の解熱鎮痛薬は用法用量を守る(重複服用に注意)
- 強いうがいや患部の強い揉み押しは避ける
- 体温・痛みの強さ・内服をメモする
- 危険サインが出たら救急相談へ連絡
夜間に症状がでた場合、翌日には予約の有無に関わらず歯科へ相談しましょう。症状が少し軽くなっても油断は禁物です。
抗菌薬だけで様子を見ると再燃してしまう恐れがあります。原因の処置まで進めてはじめて、発熱のぶり返しを抑えやすくなります。
関連記事:虫歯による歯茎の腫れの放置は危険?悪化サインと早めに受診すべき症状
自宅でできる応急処置

自宅での応急処置の目的は「痛みと熱を和らげ、悪化を避ける」ことです。根本の治療は歯科医院で進める前提ですが、ここでは今すぐ楽にする工夫をお伝えします。
市販薬の使い分け、冷却のやり方、刺激を避けるコツを押さえましょう。無理は禁物です。具体的な手順を順に確認してください。
市販の鎮痛薬・解熱薬
市販の鎮痛剤や解熱剤でも用法用量を守るのが基本です。
アセトアミノフェンは胃への刺激が少なめで、発熱や痛みに向いています。イブプロフェンなどのNSAIDsは炎症の熱や腫れに効く場合があります。
重ね飲みは大変危険です。かぜ薬や頭痛薬、総合感冒薬の成分が重複しやすいためです。また、アルコールと薬は併用しないようにしましょう。
持病があったり妊娠中や他薬を飲んでいたりする場合には、薬剤師へ相談してください。楽になっても、原因歯の治療が進まない限り再燃するかもしれません。
飲み忘れや自己中断は避け、表示と指示に従ってください。
冷却・刺激回避・口腔清掃の基本
冷却は頬の外から行うようにしましょう。タオルで包んだ保冷材を10〜15分あて、間を空けて繰り返します。
歯へ直接氷を当てるやり方はしみて悪化しかねません。辛い物や熱すぎる飲食、アルコールは控えめにしましょう。
清掃はやさしくが原則です。軟らかい歯ブラシで磨き、ぬるま湯で軽くゆすぐだけで十分です。強いうがいは痛みを誘います。入れ歯は清潔にし、合わない感覚があれば早めに調整してください。
就寝前のケアを丁寧にすると、夜間のズキズキが軽くなる場合があります。
再発や長期化を防ぐためのケア

痛みが引いても油断は禁物です。原因である歯の治療が途中で止まると、細菌が残りやすく、腫れや発熱がぶり返す恐れがあります。
仮のふたが外れる、違和感が戻るといった小さな変化も手がかりとなるため、通院の続け方と日常ケアを整理しましょう。
原因歯の最終治療完了まで通院を続ける重要性
虫歯が原因の歯の治療は、痛みが消えたら終わりではありません。細菌は見えない根の中に残るかもしれませんし、途中で止めると再感染へ振れやすいでしょう。
再発を減らすには、原因歯の治療工程を最後まで進めてください。
以下の表の工程・目的・通院の目安を確認しましょう。計画は担当の歯科医と相談し、自己判断の中断は避けてください。
| 工程(順番) | 主な目的 | 受診の目安 | 注意点 |
| 根管の消毒 | 根の中の細菌を減らす | 数日〜1週ごと | 痛みが軽くても油断しない |
| 消毒薬の交換 | 残った菌の抑制 | 1〜2週ごと | 薬の刺激で違和感が出ることあり |
| 根管充填(密封) | 再感染の道を塞ぐ | 医師の判断で1回 | 充填後は噛み合わせ確認を |
| 土台の装着 | 被せ物の土台作り | 1回 | ぐらつきや違和感はすぐ報告 |
| 被せ物の装着 | 破折・再感染の予防 | 1回 | 装着後は清掃しやすさを確認 |
工程が進むほど再感染のリスクは下がりやすくなります。噛んだ時の響きやしみる感覚、仮詰めの外れなど小さなサインでも歯科医師へ報告するようにしましょう。途中で止めるより、計画どおり完走する方が、発熱のぶり返しを抑えやすくなります。
食事・生活と口腔ケア
回復期は「刺激を減らす」「栄養をとる」「清潔を守る」の三本柱が大切です。強く噛む硬い食べ物や砂糖の多い飲み物は避けた方がよいでしょう。
就寝前のケアを丁寧にすると、夜のズキズキが軽くなる場合があります。
以下の飲食物の表を参考にしましょう。
| 区分 | OKの例 | 控える例 | ポイント |
| 主食 | おかゆ、やわらかいうどん | せんべい、固いパンの耳 | 反対側で軽く噛む |
| たんぱく | 豆腐、卵、白身魚の蒸し物 | 揚げ物の衣、スジの多い肉 | 温かすぎ、冷たすぎは避ける |
| 間食 | ヨーグルト、バナナ | キャラメル、粘着菓子 | 回数は1回までを目安 |
| 飲み物 | 水、無糖茶、ぬるいスープ | 砂糖飲料、アルコール | ちびちび飲みを減らす |
口腔ケアでは、朝晩の歯ブラシでのブラッシングに加え、夜は歯間ブラシやフロスで丁寧に歯を磨きましょう。ゴシゴシと磨くことはやめ、優しく短時間で磨くように心がけてください。食後は、ぬるま湯で軽くゆすぐとよいでしょう。
生活面では、睡眠と水分を確保してください。喫煙は治りを遅らせる恐れがあり、控える方が無難です。
無理のない範囲で続ければ、再発リスクは下げられるはずです。迷ったら、次回の診療で食事やケアの方法を具体的に相談しましょう。
関連記事:【永久保存版】歯間ブラシのやりすぎは危険?今日からできる正しい頻度とコツ
よくある質問と回答

発熱が出ると不安になり、間違った判断をしてしまう場合もあります。ここでは「いつまで様子を見るか」「受診先はどこか」「薬はどう使うか」などのよくある質問にお答えします。
虫歯が原因の発熱は何日まで様子を見てもよい?
虫歯の治療開始後2〜3日で下がるでしょう。痛みや腫れが少しずつ和らげば順調です。
反対に、38.0℃以上が続いたり夜になるたび悪化したりと症状がひどくなっている場合には歯科医院に相談するか受診をしてください。
自己判断で市販薬だけを継ぎ足すと、原因が隠れたまま再燃しかねません。受診のうえ、排膿や根の治療へ進めてください。
38.0℃以上の発熱時は歯科と内科どちらに行くべき?
歯の局所症状(ズキズキ、噛むと響く、片側の腫れ)があるなら歯科が第一選択でしょう。咳・鼻水・喉の強い痛みが主な症状であれば内科から始めても構いません。
飲み込みづらい、息苦しい、よだれが増える、といったサインは要警戒です。救急相談に連絡してください。受診先で体温と痛みの推移、内服歴を提示するとスムーズでしょう。
抗菌薬を飲めば熱はすぐ下がるの?注意点は?
抗菌薬はあくまで補助です。原因である歯の処置が進まなければ、熱は一時下がってもぶり返すかもしれません。処方どおりの量と日数を守ってください。
自己中断は耐性や再発の一因になります。飲み合わせや副作用が不安なら薬剤師に相談をしましょう。また、アルコールは控えてください。
解熱の目的であっても、水分と休養を同時に確保してください。
夜間・休日に痛みと発熱が出たときの判断と連絡先は?
まずは安静、外からの間欠冷却、適正な市販薬で一時対応しましょう。危険サイン(38.0℃以上が持続、顔の腫れ拡大、飲み込みづらい、息苦しい)が出たら救急相談へ連絡してください。
体温や痛みの記録、服薬状況をメモに残すと翌日の受診がスムーズです。翌営業日は予約の有無に関わらず、原因治療の相談へ進めましょう。
子どもの虫歯と発熱は大人と同じ?注意すべき症状
子どもは脱水と全身症状に振れやすい傾向があります。顔の腫れ、ぐったり、飲み込みづらい、機嫌の急な悪化は受診の合図でしょう。
解熱薬は体重で量が変わります。自己判断で大人用を分けるのは避けてください。水分を少しずつ与え、無理なうがいは控えるのがよいでしょう。
危険サインが重なるなら、迷わず医療機関へ相談してください。
関連記事:虫歯でこめかみがズキズキ?頭痛の原因と今すぐできる対処
まとめ|「いつまで?」より悪化サインで判断し、早めの受診を
虫歯による発熱は、歯の中や根の周囲で起きた感染への反応です。治療が始まれば数日で下がる流れが多いでしょう。
一方、処置が遅れる、排膿が不十分、原因歯が見落とされるといった要因が重なると長引くかもしれません。
38.0℃以上が続く、夜に悪化が反復する、顔の腫れが広がる、飲み込みづらいなどの身体は危険信号を出しています。
自宅では市販薬を適正に使用し、外からの間欠冷却ややさしい清掃でしのぎつつ、原因治療へ進むことをおすすめします。
自己判断の先延ばしは避け、症状の推移と服薬の記録を持って歯科医院を受診しましょう。
デンタルオフィス虎ノ門は駅近で便利!
- 日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」より徒歩1分
- 銀座線「虎ノ門駅」より徒歩6分
当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校



