抜歯後の出血、本当に怖いですよね。
ガーゼを何回も交換しても血が止まらない…
そんな経験をしたことがある方もいるかもしれません。
特に、初めて抜歯をする方や、出血が苦手な方は、強い恐怖を感じてしまうのも当然です。 出血が長引いたり、大量に出血したりすると、さらに不安は増幅しますよね。
この記事では、抜歯後の出血の原因から、効果的な応急処置、そして受診の目安まで、歯科医の視点から分かりやすく解説します。
具体的な対処法や、専門家によるアドバイスを知ることで、不安を解消し、落ち着いて対処できるようになります。
目次
抜歯後の出血、なぜ起こるの?その原因とメカニズム

抜歯後の出血は、誰もが経験する可能性のある不安な出来事です。
この章では、そのメカニズムと、血液が固まりにくい場合の要因、その他考えられる原因を詳しく解説します。
抜歯による血管損傷と出血のメカニズム
抜歯は、歯を支える歯槽骨という骨に損傷を与える行為です。
この歯槽骨の中には多くの血管が通っており、抜歯によってこれらの血管が切断されると出血が起こります。
出血量は、抜いた歯の大きさや位置、そして個人差のある血液凝固能によって大きく異なります。
抜歯後の止血処置は、この損傷を受けた血管を塞ぎ、出血を止めることを目的としています。
適切な止血処置を行うことで、出血を最小限に抑え、スムーズな回復を促せます。
抜歯による血管損傷は避けられませんが、適切な処置によってリスクを軽減できます。
血液凝固がうまくいかない場合の出血
抜歯後の出血が長引く原因の一つに、血液凝固の異常があります。
血液凝固は、血液中の様々な因子が複雑に作用して血液を固める過程です。
この過程に異常があると、出血が止まらなくなることがあります。
例えば、血液凝固因子であるビタミンKの欠乏は、血液凝固を阻害し、出血時間を長くします。
また、ワーファリンなどの抗凝固剤を服用している場合も、血液凝固が抑制され、出血リスクが高まります。
血液凝固のメカニズムは複雑ですが、これらの要因が抜歯後の出血に影響を与える可能性があることを理解しておくことが重要です。
抜歯前に、服用している薬や持病について医師に伝えることは、安全な抜歯を行う上で非常に重要です。
その他の出血原因
抜歯後の出血は、血管損傷や血液凝固異常以外にも様々な原因が考えられます。
例えば、抜歯部位の炎症や感染は、出血を悪化させる可能性があります。
歯周病などの歯茎の疾患も、出血しやすくなる原因の一つです。
これらの原因を特定するために、医師による適切な診察と診断が必要です。
抜歯後の出血が長引く、または大量の出血がある場合は、すぐに歯科医院を受診することが大切です。
抜歯後の出血!効果的な応急処置の方法

抜歯後の出血は、適切な応急処置でコントロールできます。
基本的な手順は、ガーゼによる圧迫止血、圧迫止血の強化、そして冷却です。
この章では、これらの方法を詳しく解説し、効果的な止血を実現するためのポイントを紹介します。
ガーゼを使った止血方法
抜歯直後、歯科医は通常、出血部位にガーゼを詰めて圧迫止血を行います。
このガーゼを指示された時間以上、しっかり噛むことが重要です。
なぜなら、ガーゼが圧力を加えることで血管が圧迫され、出血が止まるからです。
また、30分間噛み続けても出血が止まらない場合、新しいガーゼと交換し、さらに30分間噛み続けます。
ただし、強く噛み締めすぎると、逆に歯茎を傷つけて出血が増える可能性があるため、軽く圧迫する程度に留めることが大切です。
ガーゼを使った止血は、基本的な応急処置であり、多くの場合で効果を発揮します。
しかし、出血が止まらない場合は、次のステップに移行する必要があります。
圧迫止血の効果的なやり方
ガーゼだけでは出血が止まらない場合は、より強い圧迫止血が必要になります。
これは、出血部位を指で直接圧迫することで、血管をしっかり閉鎖し、出血を止める方法です。
直接触れると細菌感染のリスクがあるため、清潔なガーゼなどを間に挟んで圧迫してください。
この方法は、ガーゼによる止血が不十分な場合に有効ですが、長時間圧迫しすぎると、しびれや痛みを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
氷による止血と腫れの軽減
氷による冷却は、血管を収縮させることで出血を抑制し、同時に腫れを軽減する効果があります。
これは、低温によって血管が狭くなり、血液の流れが遅くなるためです。
患部に氷嚢を当て、15分間冷却します。
その後、15分間休ませ、必要に応じて繰り返します。
ただし、氷嚢を直接肌に当てると凍傷の危険性があるため、必ずタオルなどで包んで使用する必要があります。
氷による冷却は、止血効果に加えて、痛みや腫れを軽減する効果も期待できるため、抜歯後の不快感を和らげるのに役立ちます。
しかし、冷却しすぎると、逆に組織を傷つける可能性があるため、注意が必要です。
関連記事:親知らず抜歯後のドライソケットとは?激痛の原因と正しい対処法を解説
抜歯後、いつまで出血が続くのが普通?受診の目安

抜歯後の出血は、時間経過とともに自然に止血するのが一般的です。
しかし、いつまで出血が続くのが正常範囲なのか、受診が必要なサインは何か、不安に感じる方も多いでしょう。
この章では、通常の出血時間と、医療機関への受診を検討すべき目安を明確に解説します。
通常の出血時間と経過観察
抜歯後、数時間程度の軽い出血は通常起こりうる現象です。
抜歯直後はガーゼを交換しても少量の出血が続くことがありますが、徐々に出血量は減少し、数時間後には自然に止血することが一般的です。
出血が止まらない場合でも、少量であれば、経過観察で問題ないケースが多いといえます。
しかし、出血量が変わらない、もしくは増加傾向にある場合は注意が必要です。
受診が必要な場合の症状
抜歯後、出血が止まるまでに時間がかかる場合や、大量の出血がある場合は、医療機関への受診が必要です。
いずれかに該当する場合は、すぐに歯科医院を受診してください。
- ガーゼを交換しても出血が止まらない
- 出血量が多い
- 強い痛みや腫れがある
- 発熱がある
放置すると、状態が悪化する可能性もあるため、早めの受診が非常に重要です。
自己判断で対処せず、専門家の診察を受けることが大切です。
受診するタイミングと医療機関の選び方
出血が止まらない、または上記のような症状が現れた場合は、すぐに歯科医院を受診しましょう。
時間経過とともに症状が悪化する可能性があるため、早めの対応が重要です。
かかりつけの歯科医院がある場合はそちらに、ない場合は近くの歯科医院を受診しましょう。
夜間や休日で緊急の場合は、夜間診療に対応している歯科医院を探してください。
インターネットで、近くの歯科医院の情報を確認し、適切な医療機関を選択することが重要です。
迅速な対応が、抜歯後の回復をスムーズに進める上で非常に重要です。
自宅でできる応急処置の注意点

抜歯後の出血に対する自宅での応急処置は、適切な方法で行うことが重要です。
うがい、激しい運動、飲酒などは、出血を促進する可能性があるため注意が必要です。
この章では、自宅でできる応急処置の注意点と、やってはいけないことを具体的に解説します。
うがいを控えましょう
抜歯直後のうがいは、血栓を剥がして出血を再開させる可能性があるため、控えましょう。
これは、うがいによって口腔内の血栓が剥がれ、新たな出血を引き起こすためです。
うがいは、出血が止まってから行いましょう。
口腔内の清潔を保つことは大切ですが、出血が止まるまでは、うがいを控えることで、よりスムーズな回復を促せます。
激しい運動や飲酒を控えましょう
抜歯後は、激しい運動や飲酒を避けるべきです。
これは、激しい運動や飲酒によって血圧が上昇し、出血しやすくなるためです。
激しい運動は血流を促進し、抜歯部位への血液供給を増やすことで出血を誘発する可能性があります。
飲酒も同様です。
アルコールは血管拡張作用があり、出血を促進する可能性があります。
安静を保つことで、血圧の上昇を抑え、出血を最小限に抑えられます。
抜歯後の安静は、回復を早める上で非常に重要です。
負担の少ない生活を心がけ、身体への負担を軽減しましょう。
薬の服用について
服用している薬によっては、出血が長引く可能性があります。
これは、一部の薬剤が血液凝固を抑制する作用を持つためです。
例えば、抗凝固剤などの血液をサラサラにする薬を服用している場合は、特に注意が必要です。
抜歯前に、服用している薬について歯科医師に伝えることは、安全な抜歯を行う上で非常に重要です。
医師は、薬の種類や服用状況を考慮し、必要に応じて薬の服用を調整したり、止血処置の計画を立てることができます。
薬の服用について不安がある場合は、医師に相談しましょう。
関連記事:なぜ抜歯後のコーヒーが危険なのか?【3つの理由】安全に再開するためのチェックポイント
抜歯後の出血を防ぐための予防策

抜歯後の出血リスクを軽減するためには、抜歯前後の適切なケアが重要です。
抜歯前に医師と十分に相談し、抜歯後の指示をきちんと守ることで、出血を予防できます。
この章では、抜歯前後の予防策と、日頃から心がけるべきことを解説します。
抜歯前の準備と相談
抜歯前に、医師と十分な相談をすることは、出血リスクを軽減するために非常に重要です。
これは、医師が患者の病歴や服用中の薬剤などを把握することで、適切な抜歯方法を選択し、出血リスクを事前に評価できるからです。
抜歯前に不安な点や疑問点を医師に相談することで、安心して手術に臨めます。
十分な情報提供と丁寧な説明は、患者の不安軽減に繋がるだけでなく、安全な抜歯の実施に役立ちます。
抜歯後の適切なケア
抜歯後は、医師の指示に従って適切なケアを行うことが、出血を予防し、スムーズな回復を促すために不可欠です。
医師の指示をきちんと守ることは、抜歯後の回復をスムーズに進めるために非常に重要です。
指示されたケアをきちんと行うことで、合併症のリスクを減らし、安全に回復できます。
定期的な歯科検診の重要性
定期的な歯科検診を受けることは、歯周病などの疾患を早期に発見し、治療することで、抜歯後の出血リスクを低減することに繋がります。
健康な口腔内環境を保つことで、抜歯後も安心して過ごせるようにしましょう。
よくある質問と回答
抜歯後の出血に関する疑問や不安は、多くの方が抱えるものです。
ここでは、よくある質問をまとめ、分かりやすく回答します。
抜歯後、どのくらいの出血が心配ですか?
抜歯後の出血で心配なのは、大量の出血や、ガーゼを交換しても止まらない出血です。
大量の出血や、長時間止まらない出血は、血液凝固異常やその他の合併症の可能性を示唆しているかもしれません。
通常、抜歯後の出血は、適切な止血処置によって数時間以内に止まります。
少量の出血は正常範囲内である場合が多いですが、出血量が多い場合や、出血が持続する場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。
心配な場合は、迷わず医療機関に相談しましょう。早めの対応が、よりスムーズな回復に繋がります。
止血に効果的な民間療法はありますか?
インターネット上には、抜歯後の止血に効果があるという民間療法が数多く紹介されています。
しかし、それらの多くは科学的な根拠に乏しく、効果がないばかりか、かえって出血を悪化させる可能性があります。
自己判断で民間療法を試みるよりも、専門家のアドバイスに従うことが、安心につながります。
子どもが抜歯後の出血で不安な様子です、どうすれば良いですか?
子どもが抜歯後の出血で不安な様子を示す場合、まず落ち着いて優しく声をかけ、子どもの気持ちを理解しようと努めることが大切です。
出血が止まらない場合や、強い痛みや腫れを訴える場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
子どもの状態を的確に観察し、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
まとめ【抜歯後の出血の応急処置と受診の目安】
抜歯後の出血は、適切な応急処置と、必要に応じて医療機関への受診によって、安全に管理できます。
この記事で紹介した情報が、不安な気持ちを抱えている方の助けになれば幸いです。
出血が止まらない、または強い痛みや腫れがある場合は、迷わず歯科医院を受診してください。
早期の対応が、よりスムーズな回復につながります。
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当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校