「歯が痛いのに虫歯じゃないのかな……」
「歯が痛い原因がわからない……」
このように不安を抱えている方もいるでしょう。
歯が急に痛むと落ち着きません。冷たい物でしみる、噛むとズキッと響く、何もしなくても脈打つなど、痛み方には理由があります。
まずは痛みの性質と出方を手がかりに、原因の見当を付けましょう。歯に由来する痛みだけでなく、噛み合わせや副鼻腔炎、神経性など、歯以外が関わる場合もあります。
この記事では、歯原性と非歯原性に分け、見分けやすいサイン、応急対応、受診の目安を分かりやすく説明します。
歯が痛いけれど、原因がわからなくて不安という方は読んでみてください。
目次
歯の構造

歯は3つの層からできています。いちばん外側のエナメル質は硬い殻で、むし歯や力から内側を守ります。中間の象牙質には細い管が走り、冷たい物や甘い物の刺激が神経へ伝わりやすい層です。中心の歯髄には血管と神経が通り、炎症で腫れると内圧が上がってズキズキした拍動痛が出やすくなります。
歯の根の先は歯根膜というクッションで骨に支えられ、噛む力を分散します。力が一部の歯だけに偏ると歯根膜が炎症に傾き、噛んだ瞬間だけ鋭い痛みが出ることがあります。
しみる短い痛みは表層のトラブル、何もしなくても続く痛みは深い炎症が候補、噛んだときだけの痛みは力の問題が原因になるでしょう。
歯原性の4つの原因

歯に由来する痛みは頻度が高く、進行段階で症状が変わります。しみる短い痛み、脈打つ持続痛、噛んだ瞬間だけの鋭い痛みなど、出方が手掛かりになります。
ここでは、虫歯、歯髄炎・根尖性歯周炎、歯周病・智歯周囲炎、歯のひび・咬合性外傷を取り上げ、痛みの特徴と受診の目安を順に説明します。
虫歯
初期の虫歯は表面の脱灰が中心です。刺激でしみやすい一方、刺激が去れば軽快しやすいのが特徴です。
穴が深くなると象牙質を越え、冷温や甘味で鋭い痛みが走るでしょう。食事や歯ブラシで違和感が続く場合は要注意です。
虫歯が進行すると夜間のズキズキや自発痛が出ます。歯髄が近い段階では、放置すると急に悪化しやすいでしょう。小さな欠けでも内部が広がる場合があります。早めの受診で処置範囲を小さくできる可能性があります。
歯髄炎・根尖性歯周炎
歯髄炎は拍動性で持続する痛みが中心です。冷たい水で一時的に和らぐ場合がありますが、原因は残ったままです。睡眠を妨げる痛み、温かい飲食で増悪する痛みは受診のサインです。
神経が壊れた後は根の先に炎症が波及します。噛むと飛び上がるような痛み、歯が浮いた感覚、歯ぐきや顔の腫れを伴う場合があります。適切な根管処置や排膿で経過改善を目指しましょう。
歯周病・智歯周囲炎(親知らず)
歯周病は歯ぐきの腫れと出血が引き起こります。進行する噛むと鈍い痛みが出て、押すと痛む部位が分かる場合があるでしょう。
膿がたまる歯周膿瘍では、何もしなくてもズキズキした痛みへ移行します。
親知らず周囲の炎症は、下あご奥が典型です。上の歯が腫れた歯肉に当たり痛みが増します。口が開きにくい、飲み込むと痛い、発熱がある状況は早めに歯科医院へ相談してください。清掃と噛み合わせ調整が初期対応となります。
歯のひび・咬合性外傷
微細なひびや高い被せ物は力を一点に集中させてしまいます。歯根膜が炎症に傾くと、普段は平気でも噛んだ瞬間だけ鋭い痛みが出ます。冷温での自発痛とは性質が異なるでしょう。
食いしばりや歯ぎしりも歯のひびや咬合性外傷の背景になります。就寝時の歯ぎしり、日中の強い食いしばりが続くと悪化しやすいためです。咬合調整やマウスピースで負担を減らし、ひびの進行を抑える方針を検討しましょう。
非歯原性の3つ原因

歯に異常が見当たらなくても痛む場合があります。冷温で短くしみる、体調や鼻の症状で増減する、噛むより安静で痛むなどの痛みの出方が手掛かりです。
ここでは、知覚過敏や処置後のしみ、耳鼻科、頭痛、筋の関連痛を取り上げ、見分けのポイントと受診の目安を説明します。
知覚過敏
冷たい飲み物や甘酸でキーンと短い痛みが走ります。刺激が去ると数秒で落ち着くのが特徴です。
歯ぐき下がりや磨耗、強いブラッシングが背景にあります。知覚過敏用のペーストを継続して使うと緩和が期待できるでしょう。
露出部のコーティングや咬合の確認も必要になる場合もあります。違和感が長引く場合は、初期虫歯が隠れている場合もあるため、歯科医院を受診することをおすすめします。
詰め物・被せ物後の痛み
処置直後は歯髄が過敏になり、しみやすい状態になります。多くは日単位で軽快するでしょう。氷など強い冷刺激は控えると負担が減ります。
噛むと一点で鋭い痛みが走ったり、高さの違和感や数週間たっても改善しなかったりする場合は再調整の合図です。夜間の疼きや発熱を伴う場合は、別の原因がないか早めに確認してください。
副鼻腔炎・片頭痛・筋筋膜痛など
風邪の後に片側の上の奥歯が鈍く痛み、鼻詰まりや頬の重さを伴うなら副鼻腔炎が候補です。原因治療は耳鼻科領域になります。
こめかみの拍動性頭痛や咀嚼筋のこりが歯へ関連痛を送る場合もあります。歯科で異常が見つからないときは、耳鼻科や頭痛外来、理学療法の相談しましょう。
関連記事:虫歯じゃないのに奥歯が痛いときの対処法|8つの原因とNG行動まとめ
歯が痛いときの自宅でできる応急対応

ここでは歯が痛いときの受診までの過ごし方をまとめます。痛みを抑える基本は、適切な鎮痛、外側の冷却、清潔の維持、悪化につながる行為の回避です。腫れや発熱、口が開けにくい場合は無理をせず、早めの受診を目安にしてください。
鎮痛薬の一般的な使い方と注意
受診前に痛みを和らげる目的で市販の解熱鎮痛薬を使う場面があります。選ぶ際は成分の重複に気を付け、添付文書の用法用量を守りましょう。
空腹時の服用は避け、持病や内服薬がある方、妊娠、授乳中の方は自己判断を控えてください。
注意すべき事項は以下のとおりです。
- 同成分の薬の重ね飲みを避ける
- 空腹時の服用を避ける
- 持病や併用薬の相性を確認する
- 妊娠や授乳中は医療者へ必ず相談する
- 眠れない痛みや腫れは歯科医院を受診する
鎮痛は原因治療の代わりにはなりません。痛みが一時的に軽くなっても、強い自発痛や発熱や飲み込みづらさが出る場合は、感染や強い炎症が疑われます。
症状の経過と服用量をメモしておくと診察が進みやすく、薬歴との整合も取りやすくなります。夜も眠れない痛みや腫れを伴う場合は早めに受診しましょう。
冷却・口腔清掃のコツ
腫れや拍動感が強いときは、頬の外側から清潔なタオルで短時間ずつ冷やしましょう。強い力で患部をこする清掃は逆効果です。普段よりやさしいブラッシングと、ぬるめの水でのうがいを意識してください。
以下のように冷却と清掃をしましょう。
- 冷却は「15分冷やす→15分休む」を繰り返す
- 外側から清潔に冷やす
- 優しいブラッシングで清掃する
- ぬるめの水でうがいする
- 強刺激の洗口液は控える
強い刺激の洗口液や極端な温度の飲食は避けると負担を減らせます。
冷却は腫れのピークを和らげる補助です。長時間の連続冷却や凍傷に注意し、痛みの質や広がり方を観察してください。
しみる痛みが中心なら温度刺激の調整、噛むと一点で痛むなら咬合の負担軽減がヒントになります。無理を感じたら受診へ切り替えましょう。
避けるべき行動
一部の行動は炎症や痛みを悪化させます。温めすぎや飲酒や激しい運動は血流を強め、拍動痛を助長します。
自己流の処置や市販セメントでの穴ふさぎは感染リスクを上げてしまいます。鎮痛薬の過量や多剤併用も避け、迷ったら服薬は中断し医療者へ相談してください。
以下が避けるべき行動です。
- 患部の加熱や長風呂
- 飲酒や激しい運動
- 強いマッサージや圧迫
- 市販セメントでの塞ぎ込み
- 鎮痛薬の過量や多剤併用
避けるべき行動を控えるだけで、受診までの痛みが安定しやすくなります。特に発熱、顔の腫れ、口が開けにくい、飲み込みづらい、といったサインが出たら重症化の可能性があります。
自己判断で先延ばしにせず、早めに歯科へ相談してください。必要に応じて他科との連携も視野に入れましょう。
「原因不明」と言われたときの次の行動

原因がわからない場合は、再評価で見落としを減らし、日々の症状記録で手掛かりを増やしましょう。必要に応じて耳鼻科や神経内科など他科へ橋渡しします。
ここでは、検査で異常が見つからない時に前へ進むための手順を説明します。
再評価の観点
最初の診断で確定しない場合でも、拍動や鋭い、鈍いなどの痛みの性質と誘因を整理すると、原因の層が絞れます。画像は歯科用X線に加え、必要時CTで根や上顎洞を再確認します。
咬合の偏りや歯の微小なひび、親知らず周囲の炎症など、小さな所見が痛みの鍵になることがあります。鼻や頭痛、筋の症状が併走する場合は、歯以外の関与も視野に入れてください。
症状記録の付け方
診断の精度は、短期間の記録でも高まりやすいです。「いつ」「どこが」「どう痛むか」「何で増悪や軽快したか」「服薬や睡眠」「仕事量」「月経周期」「鼻症状の有無」まで書き添えると、再診時の推理が進みます。
以下を目安に、1〜2週間の簡潔な記録から始めてください。
- 発症日時・持続時間
- 痛みの種類・強さ(数値化)
- 誘因・緩和因子(冷温・咬合など)
- 併発症状(鼻・発熱・頭痛)
- 服薬内容・効果と副作用
記録は完璧でなくても構いません。診察室で同じ説明を繰り返さずに済み、画像や検査の選択が合理化されます。
運動で顎が痛む、冷水で一時軽快、夜間に悪化などのパターンは鑑別に直結します。スマホのメモや表形式で簡潔に続けてください。
他科受診の目安
ここでは、「疑う原因」を起点に受診先を選ぶ流れを整理します。症状は一見ばらばらでも、原因ごとに典型的なサインがあります。
痛みの出方、随伴症状、増悪のきっかけを並べ替えるだけで、次に取るべき行動が見えてきます。迷う時は安全側に寄せ、早めの相談へ切り替えてください。
| 疑う原因 | 症状の手掛かり | 受診先 | 受診の急ぎ |
| 副鼻腔炎 | ・風邪後の片側上顎臼歯の鈍痛 ・鼻詰まり、頬の圧感 | 耳鼻咽喉科 | 数日以内 |
| 三叉神経痛 | ・会話や飲食、触れると電撃痛 ・痛みは数秒で消える | 神経内科/脳神経外科 | 早め |
| 狭心症・心筋梗塞 | ・階段で顎や下顎が痛む ・安静で軽快、胸部症状を伴う | 循環器内科/救急 | 直ちに |
| 片頭痛 | ・拍動性頭痛の再発 ・光過敏や吐き気+歯の関連痛 | 頭痛外来/神経内科 | 状況により |
| 顎関節症 | ・開閉口で顎〜こめかみの痛み ・関節音、開口制限 | 歯科口腔外科 | 通常受診 |
| 歯性蜂窩織炎・膿瘍 | ・強い腫れや発熱、嚥下痛 ・口が開けにくい | 歯科口腔外科/救急 | 当日 |
| 深部感染の進展 | ・片側の頬〜眼の腫脹 ・視力異常、高熱 | 救急 | 至急 |
胸の圧迫感や息苦しさ、急な高熱、顔貌の速い腫れは緊急サインです。受診先に迷う場合は、まず最寄りの医療機関で初期評価を受け、必要に応じて適切な専門科へ紹介を受けてください。
よくある質問と回答

ここでは「受診先の選び方」「痛みの仕組み」「市販薬の目安」など、相談が多い疑問を簡潔にまとめます。
痛みのタイプと随伴症状に注目すると、次にとる行動が見えやすくなります。迷ったら安全側で判断し、強い腫れや発熱、口が開けにくい場合は早めに受診してください。
歯が痛いとき何科を受診すべき?歯科と他科の目安は?
拍動痛や噛むと増悪、冷温でしみるなどは歯科が起点になります。腫れや咬合時痛、夜間の強い痛みも歯科を受診しましょう。救急サインがあれば当日対応が安心です。
風邪後の片側上顎痛や鼻症状は耳鼻咽喉科、電撃痛は神経内科や脳神経外科、運動で顎が痛み胸部症状を伴うなら循環器での受診をおすすめします。
迷うときは医療機関で初期評価を受けましょう。
歯が痛いとき水を含むと痛みが和らぐのはなぜ?
急性歯髄炎では歯髄内圧が上がり、冷却で一時的に落ち着く場合があります。冷水で和らぐのは圧の低下が関与すると考えられます。
ただし根本治療にはなりません。無理な長時間冷却や氷の含嗽は刺激になります。症状が続くなら受診し、原因に合わせた処置を受けてください。
市販薬が効かない・効きにくいときの目安は?
最大用量を守っても眠れない、発熱や腫れ、飲み込みづらさを伴う場合は早めの受診が目安です。自己判断での多剤併用は避けてください。
持病や併用薬、妊娠や授乳中は選べる薬が限られます。服用量と効果の記録を持参すると、診療がスムーズに進みます。
詰め物や被せ物後のしみる痛みは普通?
処置直後は一過性の過敏が出やすく、日単位で軽快する場合があります。氷など強い冷刺激は控えると負担を減らせるでしょう。
噛むと一点で鋭い、数週間たっても改善しない、高さの違和感が強いときは再調整を相談してください。夜間の拍動痛や腫れを伴う場合は早めの受診をおすすめします。
虫歯じゃないのに奥歯全体が痛いときの対処法は?
食いしばりや歯ぎしり、咀嚼筋の緊張、鼻の炎症が背景にある場合があります。まずは睡眠やストレス、鼻症状の有無を確認しましょう。
歯科で咬合と筋の評価を受けると道筋が見えてきます。必要に応じてナイトガードや理学療法、耳鼻科、頭痛外来との連携を検討してください。
関連記事:副鼻腔炎で歯が痛いのはなぜ?症状の特徴と対処法も詳しく解説
まとめ|歯が痛い原因を特定するために早めに受診しよう
歯の痛みは、虫歯や歯髄、根の炎症、歯周病や親知らず、ひびや咬合の負荷といった歯由来に加え、副鼻腔炎や神経性、筋の緊張など歯以外の要因でも起こります。
見極めの糸口は、痛みの性質と発症状況、腫れや発熱など随伴症状です。
受診までの応急対応は、用法を守った鎮痛、頬の外からの短時間冷却、やさしい清掃、悪化行動の回避を基本にし、強い腫れや発熱、開口困難、嚥下痛などの緊急サインがあれば当日受診をしましょう。
診断がつかない場合は再評価と症状記録で手掛かりを増やし、必要に応じて耳鼻科や神経内科などへ橋渡しを受けると前に進みやすくなります。早めに原因に近づき、解決へ進んでいきましょう。
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当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を書いた人

デンタルオフィス虎ノ門 院長 柳瀬賢人
所属学会・勉強会
- MjARSの主宰(歯科医師の勉強会)
- M:ALT’s(@土屋歯科クリニック&works)所属
- SJCD(日本臨床歯科学会)会員
- ITIベーシック・アドバンス サティフィケイト
経歴
- 東京医科歯科大学 卒業
- 名古屋大学 口腔外科
- 歯周病インプラント専門医Jiads講師のもとで勤務
- 医療法人複数歯科医院勤務
- 医療法人歯科ハミール デンタルオフィス虎ノ門院 院長就任
出身高校
- 愛知県立明和高等学校



